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Premier League14節 エバートン vs アーセナル
グディソン・パーク
結果:2−1
エバートン
22’ OG
45' ミナ
アーセナル
35’ ぺぺ(PK)
スターティングメンバー
タレントを生かすエバートン
チェルシーを破り、レスターを破り、3連勝を目論むエバートン。開幕当初の勢いを取り戻すために、絶賛絶不調中のアーセナルをホームに迎え、そして叩くことに成功した。
アーセナルのこの日の試合のスタンスはエバートンにボールを持たせることで、焦らし、ミスを誘ってボールを奪うことで、試合に入っていた。
これに対してエバートンは、選手個々の能力を最大限に生かす明確な戦い方でアーセナルの守備を破っていく。
ではエバートンはどのようにタレントを生かす戦いを行っていたのだろうか。
まずエバートンの配置はこのようになっていた。
CHデイビスがアンカーのような位置をとり、ドゥクレが前に出ることで4-3-3の形へ。この時にSHは必ずサイド目一杯に張る。またアーセナル3トップに対しいて数的優位を作るためにSBが必ずと言っていいほどSTの横にポジションを取るようになっていた。
そして何よりもCFで3バックをピン止めすることができていた。今季、本格的にブレイクしたカルバート=ルーインをアーセナルは3人で止めにかかっていた。
これでWBとSHが1vs1になるように仕組まれていた。
そして以下のように攻撃を仕掛けていく。
このように幅を作るSHにボールが入ると、OMFが流れてきて、SB、OMF、SHでトライアングルを作り出してサイドを攻略していく。もちろん、これはSH vs WBの構図のヘルプで、基本的にSHが縦に仕掛けることでクロスからの攻撃を仕掛けていた。
これで中で待つCFにクロスを届け、フィニッシュという形で攻撃を終わらせる。これがまず1つ目のエバートンの攻撃。
そしてもう1つがよりシンプルな攻撃方法となる。
このように、アーセナル3トップとCHのプレスを、4バックとCHで呼び込むことで、MF-DF間にスペースを作り出す。この準備が整うと、GKピックフォードから一気にCFへのロングパスを送り込む。この時に、CFはCBホールディング側で競り合うことが多かった。これはホールディング側で競り合うことで、勝率を上げること、そしてSHリシャルリソンへのフリックで一気にゴール前まで迫る意図があったからだろう。
これら2つの攻撃で特に前半、エバートンはアーセナルに圧を加えていき、リードして前半を折り返すことに成功した。
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間延びしてしまう原因
アーセナルが守れない理由の1つに間延びしてしまうことがある。これには2つの原因がある。まず1つ目がCHが前に出てプレスを行った際にバックラインが上がらないことだ。この試合でも、バックスに人数が「余っている」状態になっていた。カウンターを警戒して、バックラインが低くなっているので、ライン間に大きなスペースが生まれてしまっている。
これは攻撃時にも言えることで、CHが出たスペースの管理が上手くいっていない印象だ。だからこそ、ネガトラの局面で、置いていかれることになってしまうのではないだろうか。
そしてもう1つが、ロングパス、ミドルパスが多くなってしまっていることだ。これは昨季から散見されていたことで、今季のアーセナルが勝てなくなっている原因の1つとなっている。ライン間でボールを引き出す選手が、ほぼ全てサカが1人で担っている。
だからこそ、アーセナルはCHやCBから背後へ半ば強引な背後へのミドルパス、ロングパスが増えて、間延びを生じさせる原因になっている。
後半に奮起したアーセナル
ビハインドで前半を折り返したアーセナル。このままズルズル試合を進めていくかと思ったが、リアクションは良い意味で予想を裏切るものだった。
ボール保持の局面に修正を加えることで、アーセナルはエバートンを押し込んでいく。
①:右サイド中心の攻撃へ
まず1つ目の修正が左サイド中心の攻撃から右サイド中心の攻撃にシフトしたことだ。
これには、SHリシャルリソンを守備対応させて、低い位置まで帰陣させる狙いがあった。これを行うことで、ロングパス→フリックの攻撃を押さえ込む意図があったのではないだろうか。
ではどのように右サイドの攻撃を修正したのかを解説していこう。
この図のように、CHセバージョスがサイドに流れてボールを受けることが多くなっていた。このボールを受ける立ち位置をいうのが4-4-2の2トップの脇だ。
これでCHが下がってきたので、WBを高い位置へ押しやる。これを行うことで、四角形を作り出し、SHに対して守備の判断を迫らせる。SHが出てくれば、WBへ、出てこなければSTへ縦パス→大外のWBへ、厳しい場合はCB経由で下がってくるSTウィリアンへボールを供給する。
これで右サイドの攻撃が活性化すると同時に、SHリシャルリソンを押し下げることに成功していた。
②:ルイスの持ち上がり
2つ目の修正がCBルイスの持ち上がりだ。これを行うことで、徐々に左サイドでも攻撃を仕掛けれるようになっていく。
このように、CHエルネニーがCBの間に降りることでルイスの持ち上がりを促す。これで2トップの脇を持ち上がることで、CBティアニー、中に入るWBサカ、降りてくるSTウィリアン、そして背後へのパスの選択肢を得れる。さらに、CBが持ち上がることで、ライン間に選手を無理やり配置することができるようになっていたので、2ndボールやネガトラでの対応も改善されていた。
だから、アーセナルは後半にかなり押し込むことができていたのだろう。
③:4-2-3-1への変更
そして最後の変更。それが4-2-3-1への変更だ。これを行うことで、ウィリアンに自由を与え、ライン間でのプレー、両SHのハーフスペース配置による、縦パスの引き出しを付け加えた。
この場合はCHセバージョスが3列目に残ることが多くなり、CHウィロックとOMFウィリアンの入れ替わりが頻繁に行われる。これで、エバートンCHに対して混乱を生じさせて、ライン間でボールを引き出せるようになる。また、エバートンCHがウィリアンを意識するようならば、中に入り、ハーフスペースを取るSHへの縦パスを選択する。ここを封じるために、SBが中に入る立ち位置を取るのならば、幅を作り出すSBへのパスを選択することで、外から侵入することを選択。
これら3つの修正を後半に加えたことで、アーセナルは息を吹き返してゴールに迫ったが、エバートンゴールを破ることはできなかった。だが、この後半のリアクションはかなり、ポジティブに捉えて良いのではないだろうか。
狙いたかったマイナスのスペース
アーセナルがサイドから攻撃を仕掛けていく場合。エバートンはクロス対応のラインが、かなり深い設定になっている。それに伴い、2列目もほぼディフェンスラインに吸収されている。だからこそ、アーセナルは「マイナスのクロス」を選択するべきだったのではないだろうか。
この試合、アーセナルはほぼ全てのクロスが、センターへの『正直』なクロスだった。だからエバートンの高さと強さのあるバックラインの選手たちに簡単に弾き返され、2ndボールを拾われてカウンターという構図になることが多かった。
個人的な印象だが、エバートンの失点シーン。これはマイナスのクロスを入れられて、失点することが多い印象を受ける。
仮にアーセナルがマイナスのクロスを数本、供給することができていたのならば、また結果は変わっていたのかもしれない。
やはり脅威だ、エバートン
チェルシー、レスター、そしてアーセナル。この3試合を続けて観戦させてもらった。そこで感じるのは、やはりエバートンは脅威な存在だということ。シンプルに高さと強さを生かす戦いを選択することが多いエバートン。そしてそれを高精度で実行する選手が揃っている。だからこそ、脅威なのだ。難しいことをせず、そしてチーム全体のベクトルが同じ方向を向いている。アンチェロッティのこのチームは十二分にビッグ6の牙城を崩す力があることを示した。
一方のアーセナル。何があったらここまで崩れるのか。そのぐらい、理不尽なほどに絶不調だ。だが、それでも、後半で見せた4-2-3-1。これには希望を抱くことができたのではないだろうか。少なくとも、自分はそのように感じた。そしてこれからこの布陣で闘うことを選択するのならば、エジルを見たくなる。クリエイティビティ。今のアーセナルには、ベンゲル時代のような「ロマン」を感じることができない。クリエイティブな選手、エジルが加わることで、一気に状況が変わると個人的には思っている。というか、そうなって欲しい。彼の美しいプレーをもう一度ピッチで見てみたいと強い願望が徐々に強まっている。
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