PL チェルシー×ノリッジ・シティ 〜チェルシーのビルドアップについて〜

 

はじめに

シーズン佳境に入り、激化の一途を辿るCL出場権争い。その争いの渦中にいるのが、ロンドンの青い雄、チェルシーだ。彼らはシーズンを通して安定した戦いを披露できず、何度もポイントを落としてきた。仮にこのポイントを全て拾うことができていたのならば、この争いに巻き込まれることなく、シーズンを過ごすことができていただろう。だがこのような「たられば」の話をしていても意味がない。今回ホームに迎えたのは、残念なことに降格が決まってしまったノリッジ・シティだ。だがノリッジのサッカーは魅力的で、チェルシーはこの試合のポイントを落とすことは大いにあり得る話だった。だが蓋を開けてみれば、危ないシーンをなく、1-0という結果で勝ち点3を積み上げることに成功し、3位を死守した。では今回はこの試合で見せたビルドアップについて紹介していこう。

 

スターティングメンバー

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ビルドアップについて

今回触れていきたいのはビルドアップだ。この試合というか、今までの試合の中でチェルシーはボールと同サイドに人を集めることで数的優位を作り出し、前進を試みている。ではどのように人を集め、どのようにボールを動かして攻撃の準備に入っているのか。

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これがよく見せるチェルシーのビルドアップの形。まずバックラインでは『プレッシングプレーヤー+1』の状況を作り出す。この試合はノリッジのプレッシングプレーヤーが1枚だったので2CBでボールを回すことが多かった。そしてボールサイドのSBとWGで幅を作り、IHがノリッジ2ndラインの前に入ったり、ライン間に立ったり、基本的に『ハーフスペースで縦の動き』を加える。さらにCFのジルーもハーフスペースに入ってくる。中央で起点を作れるCFをハーフスペースに動かす所が特徴的だ。これに関連して中央のスペースにWGが入ってくる。こうすることで全体を中央に集め、逆のSBをアイソレイトすることでができる。

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これで3レーンの中で5角形、サイドでは4角形の形を作り出すことでできる。だからこそ、この3レーンで数的優位を作り出し、そして前進することが可能になっている。ではここからどのようにボールを動かしていくのか。

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これが『CBから』ボールを出す時の優先順位。もちろん最初に探すのがIHへの縦パスだ。ライン間に立つIHにパスを送ることができれば2ndラインをひっくり返すことが可能になるので、優位に立つことができる。

次の優先順位になるのがSBへのパスだ。これはWGにできるだけ早くボールを届けることで展開を早くする目的があると同時に相手のプレスを呼び込み、ギャップを作る目的がある。だからここが優先順位②となっている。

そして3番目のパスを送る所がハーフスペースに流れてきているCFへのミドルパスだ。これはCFにジルーが入った時に生まれるパスコース。ジルーだとこのミドルパスをしっかりと収めることが可能で、さらには2ndボールを作ることができる。またCBを1枚誘き出すことができるので、フリックをすることで中央に入ってきているWGが背後に抜け出すことができる。基本的に丁寧に繋いで攻撃を組み立てることを試みているチェルシーだが、このようなシンプルな前進方法も持ち合わせているので、相手は安直にプレスに行けない状況に陥ることになる。

最後に4つ目。これは今回の試合のように、相手のブロックがなかなか崩れない、且つプレスを呼び込めない時にアイソレイトしたSBへパスを送る。本当は1度、ライン間にパスを打ち込んでからサイドチェンジをすることが望ましいのだが、目線を変え、相手を無理やりズラすためにサイドチェンジを行う。先ほども少し触れたライン間に打ち込んでからサイドチェンジすることが本来の狙いなので、CBからサイドチェンジすることの優先順位が低くなっているのではないだろうか。

さらにこのようなパターンもある。

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ブロックが崩せない、相手が動かない場合は、IHが相手の2ndラインの手前に降りてくることで相手を1枚釣りだそうと試みる。仮にここで釣り出すことができたならば段差ができるので、CFへのミドルパス、または絞ったWGへのパスでラインを突破する。ここで絞ったWGの役割が重要で、縦パスのコースを創出するだけではなく、CFジルーのサポート、または彼が作った2ndボールの回収を行う。ここIHが下がることで中央の選手を釣り出せる理由は、SBのアスピリクエタがあえて少し高い位置を取ることで近くの選手に捕まりにいき、ピン留めすることができるから。だからノリッジSH、特に右サイドのSHはCBにプレスに行くことが限りなく少なかった。

では仮にIHが下がっても中央の選手を釣り出すことができなかった場合はどうなるのか。

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この場合はIHがボールを受けて簡単に前を向けるのでDMFが寄ってきてCFをボールサイドに寄せる。そしてIHから逆のCBにパスを送ることで目線と局面を大きく変えることで相手を横に動かしてギャップを作る。このように縦に動かせないのならば横に動かす術をチェルシーは持っている。

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そしてこのように中央に寄せたことの恩恵をここで受ける。それがノリッジSHのスライドが間に合わないこと、さらにはCBにプレスに行くかどうか迷わせることができることだ。これでCBのズマは簡単に幅を取るSBにパスを出す。ここで簡単に運ばれたくないので代わりにSBがプレスを行う。これで中央にポジションを取っているWGが内⇨外の抜け出しで背後を取れる。この似たような形でチェルシーは敵陣深くでWGプリシッチが抜け出すことでクロスを送りこみ、ジルーの先制点かつ決勝点を生み出した。

では最後にCBがSBにパスを出した時はどのようになるのか。

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この場合は先ほども少し触れたようになるべく早くWGにボールを届けたいように見える。

だから1番良いのがSB⇨WGへ直接ボールを届けるパターン。これでSBがSHを誘き出しているのでWGはその背後である程度のスペースを残した状態で相手SBと1vs1に持ち込むことができる。これで質的優位に立つことができる。

だがこのパスコースは読まれやすく、そして前進されたくない相手は必ず消してくる。だから

その場合は1度IHを経由することでWGにパスを届ける。この時に秀逸なのがDMFのジョルジーニョだ。彼がボールサイドによって来ず、中央に残ることでCFをピン留めし、IHが降りてボールを受けれるだけのスペースを残しておく。これでSBの所でSHを釣り出し、さらにIHが降りて中央の選手を釣り出すことに成功するのでライン間でWGがボールを受けることが可能になる。そしてWGにボールが入ると一気にスピードを上げて攻撃を仕掛ける。(ここでサイドチェンジを打つのが最も効果的でこれはシーズン当初から狙っていた)

このようにしてチェルシーはビルドアップを行い、ボールを握り続けて試合を優位に進めていった。

 

まとめ

この試合で見せたビルドアップはこれからチェルシーが目指し、そして基盤となるものではないだろうか。シーズン当初はIHとWGの持ち運びで前進を試みていたが、ここ最近のものはしっかりと人を配置してドリブル中心ではなく、相手を動かしてパス中心で前に運び出すものになっている。このビルドアップの精度を上げていくことで今シーズンのトップ4フィニッシュ、そして来季の優勝争いに絡めるのではないだろうか。ランパード監督が志すサッカーは、来季にもかなり期待感の持てるものになっている。どうにか3位を死守し、CLの舞台で躍動するチェルシーを見てみたいものだ。次の試合のFAカップ、マンチェスター・ユナイテッド戦がより楽しみになる一戦だった。

 

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終わりに

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