はじめに
LaLigaが再開。このリーグの行方は屈指のライバル関係のバルセロナとレアル・マドリードのどちらかで決まりだろう。そして現在、この優勝争いは激化している。この白い巨人よりも先にバルセロナは完勝を収め、引き離される訳ににはいかなかった。そして結果はご存知の通り、しっかりと勝ち点3を積み重ね、バルセロナを勝ち点2差で猛追している。
そこで今回のマドリーの再開一戦目。明らかに対戦相手のエイバルよりもコンディションが良く、60分辺りまで圧倒した。特に前半で見受ける事ができた、レアル・マドリーのエイバルの動かし方。これがかなり秀逸で観ていて爽快だった。では今回は白い巨人が如何にしてエイバルを動かし、そして試合をコントロールしていたのか。これを紹介していこう。
スターティングメンバー
エイバルの守備戦術
まずはどんな試合も相手の守備を考えなければ始まらない。そこでまずはエイバルの守備戦術から触れていく。
まずはエイバルのプレス開始時の基本の並び。エイバルは4−1−4−1の形で試合に臨み、プレス時は4-3-3のような形を取っていた。まずはCFがDMFを消しながらCBに圧をかける。この時にSHがSBを切れ、そしてIHにもプレスに行ける立ち位置を取る。そうする事でCB⇨CBのパス交換をさせる。
このCB間のパス交換の間にエイバルは逆のSHがボールを受けるCBにプレスを行う。この時もSBを切りながらプレスをかける。ここでCFがCBを牽制したのでDMFのマークが外れるので、そこをIHがケア。さらにボールサイドのIHもIHのモドリッチを捕まえ、逆のSHはスライドしてIHのクロースを捕まえる。
このようにする事でエイバルは中央のエリアでボールを奪う事を試みた。何度かボールを引っ掛ける事はできていたが、マドリーの開始早々の先制点、個人のレベルの高さと動かし方により、この守備は苦しいものとなった。
ではどのようにレアル・マドリーはエイバルを動かし、スペースを見つけて前進して行ったのか。
レアル・マドリーの動かし方
DMFが降りてSHの背後を使う
まず最初にマドリーが試みていた事。それがDMFのカゼミロがCBの間に降りるというものだ。これをする事で、マドリーはどのようにスペースを作っていったのか。
まずDMFカゼミロがCBの間に降りる事でエイバルCFは前に出てくる。さらにこれを押し込めるチャンスと判断したSHが開いたCBにプレスをかける。これでマドリーはエイバルの1stプレスを呼び込む事に成功する。尚且つ、DMFが降りたので、中央のエリアを開ける事ができる。
このようにした事で困るのはIHだ。本来ならばCFが外したはずのDMFカゼミロのマークを行うのだが、そのカゼミロが「遠い」場所にいる。だから一瞬の判断の遅れが出てくる。そこでカゼミロが開けたスペースに降りてくるのがIHのクロースだ。
ここにクロースが降りてきた事でボールサイドのエイバルIHはステイするのか、前に出るのか判断に迷う。その間にIHのモドリッチは1列前にポジションを移し、次の準備へ。これで中央でボールを受けたクロースはSBのカルバハル、逆SBのマルセロ、はたまた抜け出す両WGへのパスを選択。
より多く選択していたのは、SBへのパスだ。エイバルSHがSBを切りながらCBにプレスに行っているので、基本的にSBで時間ができる。そしてここからの縦パスを引き出すため、「浮いた」ポジションに移動していたIHのモドリッチがボールを引き出す動きを加える事で展開を広げていく。
浮いたポジションをIHのモドリッチが取っていることでこのように多くの選択肢を持つ事ができる。もちろんまだ様々な展開があったので、気になる方はぜひこの試合を見返してみて欲しい。
これがDMFが降りてエイバルを動かしたパターンの1つ。そしてこのパターンにはもう1つの方法があった。それがこちら。
ここまでの動きは基本的に同じ。そしてここから先が大きく異なる。
それはこのようにSBが中央に入る事だ。SHがSBを「背後」で消しているので、プレスをかけながら、SBを完全に消す事は不可能だ。だからそれを生かし、SBのカルバハルが中に入る事で中央のパスコースを作り出す。この時にWGのロドリゴが少し下がり目のポジションを取ること、IHモドリッチが先程と同様に「浮いた」ポジションに移動する事で前進を試みる。
このようにしてこのパターンは自分たちが主体で動く事でスペースを作り出し、前進をして早い攻撃を仕掛けていた。
個人技でSHの背後を使う
そしてもう1つSHの背後を使う(いや使えるという表現が正しいかもしれないが)パターンがあった。それがシンプルにCBがSHのプレスを剥がすというものだ。圧倒的な個人技の差により、マドリー の選手は優位に立つ。ここでもこの恩恵を受ける事ができていた。個人技で剥がされては堪ったものじゃない。それを「日常のように」行えるマドリー。恐ろしいものだ。
IHクロースが降りる
そしてもう1つの方法がこれだ。IHのクロースが降りる事で相手を動かし、そしてスペースを作る。個人的にこの方法が見ていて痛快だった。ではどのようにしてエイバルの選手を動かし、判断を迷わせたのか。
このようにIHのクロースが降りる場所はCBの間ではなく、CBの脇だった。ここに降りる事で、まず迷わせた選手がマークのタスクがあるIHとCBへのプレスのタスクがあるSHだ。
このようにSHはCBにプレスに行くのか、IHにプレスに行くのか、はたまたSBを消すのか、の判断を迫られる。そしてIHはDMFに行くのか、降りたIHに着いていくのか、この判断に迷う事となる。だからこそ、CBの脇に降りたIHのクロースは時間を持ち、優位に立つことができた。
そしてここから2つのパターンで前進してく。
まず1つ目がこのようにSBが入り込むパターンだ。これにはIHクロースからの縦パスのコースを創出する意図があったのではないだろうか。SBのマルセロが中に入った事で、WGのアザールが大外に開き、純粋な1 vs 1の状況でボールを受ける事ができる。またアザールが流れたので、CFのベンゼマがハーフスペースに顔を出す事が可能に。これでクロースは深い位置から一気に縦パスを打つ事ができる。
さらにもう1つのパターン。これがこちら。
頻度こそ少なかったが、アザールがSHの背後に降りる事で、エイバルSBを迷わせる事ができる。マドリーの選手はこの「迷わせる」立ち位置を取る事が非常に上手かった。
そしてこれでクロースからCFのベンゼマへのミドルパスで一気に前進。この時のサポートをアザールが前向きに行えるので、このような動きをしていたのではないだろうか。
仮にアザールに釣られて、エイバルSBが出てくるようであれば、CFのベンゼマがダイアゴナルにその背後を突く事もできる。だからこそ、SBの判断を難しくする事ができた。
このようにしてレアル・マドリーはエイバルの選手を動かし、スペースを作り簡単に前進をしていく事で、特に60分の交代まで試合を圧倒的に支配していた。
補足:選手交代で渡した試合の流れ
触れておくべきトピックスがもう1つ。それがマドリーが選手交代でエイバルに流れを渡してしまった事。これには大きく2つの理由があったと考えられる。
まず1つ目が、ベンゼマへのロングパス中心になってしまった事。これは先程も少し触れたが、ベンゼマへのロングパス、またはミドルパスを打つ場合はWGのサポート、特にアザールのサポートが必ずあった。だがそのアザールが交代してしまったため、ベンゼマが孤立する事が多くなっていた。だからボールを保持できる時間が徐々に減っていき、流れを渡してしまった。
そしてもう1つの要因がプレスの強度だろう。これは体力的限界と入ってきた選手のコンディションの問題が要因ではないだろうか。IHのモドリッチが必ずDMFを消しながらCBにプレスをかけ、後ろの選手も連動してコンパクトさを保ち、捨て球を蹴らせていたのだが、それができなくなっていた。だからエイバルはボールを動かす事ができるようになり、攻め込む事ができた。
これら2つの要因により、マドリー は流れを渡してしまっていた。だがそれでも60分までの試合内容はかなり収穫の多いものとなったのではないだろうか。
まとめ
この試合の解説を務めた戸田さんも言っていたが、リーグ戦が再開して僕も多くの試合を見させていただいた中、レアル・マドリーが1番コンディションが整っているように映った。
それぐらいレアル・マドリーの出足の速さ、キレの良さ、フリーランの質が高かった。この質のサッカーを中断明けからやられるとエイバル側からすると堪ったものではなかっただろう。マドリーはこの勝利でしっかりとバルセロナの背中を追う事ができている。ここから更なる連戦と激戦がまちうけているラ・リーガ。はたして栄冠はレアル・マドリーの手に渡るのか、はたまたこのままバルセロナが首位の座をキープし続けるのか。これからとても楽しみで、色々なものが詰まったシーズンの佳境だ。これからもレアル・マドリーの試合に注目していきたい。
終わりに
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