09-10 CL 1st Leg インテル vs バルセロナ 〜特徴が出たSHの役割の違い〜

 

 

前置き

『サッカーへの恩返し』をしたく、この度『Football Base』という会社を立ち上げました。

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では早速この試合のレビューを行っていきましょう!

最後までお付き合い宜しくお願いします!

 

はじめに

DAZNのYouTubeチャンネルで提供してくれている、『UEFA CL rewind 名勝負プレイバック』。このチャンネルで見つけたインテルvsバルセロナ。

その手腕を絶対的なものとしたモウリーニョと若きグアルディオラの一戦。

約10年前の試合だが、戦術的な要素がとても強く出ている試合だと個人的に感じた。その中でも特に注目して欲しいのが、それぞれの『SHの役割』だ。ここが大きく試合の勝敗に関わっていたのではないだろうか。では今回はこの名勝負、特にSHの役割に焦点を当てて解説をしていこう。

 

スターティングメンバー

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 このメンバーを見てもらったらわかるように、とても懐かしく、そしてレジェンドだらけの試合。郷愁に浸ることのできる、良い試合だった。

では感想はこのくらいにして、早速『SHのそれぞれの役割』について解説していこう

 

バルセロナのSHの役割

 まずはグアルディオラ監督のバルセロナから。

この時期からグアルディオラ監督は「幅」と「ハーフスペース」の概念をしっかりと活用し、そして選手に落とし込んでいた。その結果が『SHの役割』だ。

ではSHにはどのようなタスクが求められていたのか。

 

①:幅を作る役割

まず与えられていた役割はSH本来の役割。それが「サイドで幅を作り、仕掛けること」だ。

ではどのような場面でこのタスクを求められていたのか。

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まずSHが幅を作る場面は「ビルドアップ」の局面。この局面の時にバルセロナのSHは幅を作る事が多かった。

その理由が上の図にある。この図のようにSHが幅を取ることで四角のエリアにスペースを作る事を狙った。そしてここにスペースを作る事で、メッシとCHのブスケツ、またはシャビに時間を与える事で前進し、そして展開をこの2人に促す。特にメッシがここのスペースに入る事で、前進を試みていた。

ではなぜここにスペースを生む事ができていたのか。

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 インテルの守備戦術は局所で人を捕まえるものになっていた。だからCHのシャビかブスケツのどちらかがCBの間に降りる事でOMFのスナイデルを釣り出すか、スナイデルのマークを2枚にする。(CHが縦関係になるから)これでスナイデルの判断を難しくする。

さらにCHが縦関係になっているので、SHも「タスク過多」に陥る事になる。本来はSBを牽制するのだが、CHが隣にいるので、どちらをマークするかを迷う事になる。

極め付けはインテルのCH。インテルCHのタスクはメッシのマンマーク。だが当時若いメッシといえど、唯一無二のこの選手を1人で止めるのは難しい。ここで1人になってしまうのは、SHが幅をとり、SBをピン止めしているから。

だからバルセロナは中央にスペースを作り出すことができ、OMFとCHで時間を作ることができた。

そして多くの選択肢を持ったバックラインからの選手から効果的な縦パスを送ることで、バルセロナは簡単に前進をしていった。

 

ここで重要な役割を果たしていたのがSHで、ビルドアップの局面で幅を作る事で、このような局面を作り出す事に成功していた。

 

②:アタッキングサードでの役割

では次にアタッキングサードでの役割。ここのポジションの取り方こそが、現在のグアルディオラ監督の戦術の基盤になっていると感じた。ではどのようにポジションをとり、そしてその役割はなんだったのか。それを解説していこう。

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このように現在ではよく見られる「ハーフスペースにSHが入り込む」という戦術。ただここにポジショニングをさせる事は簡単だが、10年前からグアルディオラ監督には明確な狙いがあった。それが『SBのピン止め』とそれに伴う『SBの飛び出し』だ。さらにSHが中に入ることにより、OMFのメッシが自由に動くことができる。それは前線に、もっというとペナルティエリアの幅にしっかりと人数を揃えることができるから。これでバルセロナは「メッシとシャビ」のIHロールで組み立て、そして崩しを行う。

そして最終的にはSBが飛び出して深い位置をとり、そしてマイナスのクロスでチャンスを作り出す。SBに時間とスペースを与えるためにSHがハーフスペースにポジションを取るようになっていた。

先制点のシーン

この試合で先制点を奪ったバルセロナ。このシーンはグアルディオラ監督が狙っていた形だっただろう。それがこのような形だ。

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このようにメッシとシャビでパス交換を行う事でSBが上がる時間を作り出す。そして中央に人を寄せ、SBが上がったタイミングでSBを使う。そうするとSBはいとも簡単に深い位置まで侵入することができる。これは先程も説明した、SHがSBをピン止めしているから。さらにメッシとシャビで人数を割かせたので、CHのカンビアッソもカバーに間に合わない。

そして深い位置をとったSBはマイナスのクロス。ここでもSHがハーフスペースにポジションを取っているので、CFのイブラが引っ張った背後のスペースに入ることができる。

約10年前から、ペップシティのような戦術を取っていたことに驚きを覚えた。

 

補足:現在と違う点とその変遷

補足として、現在のグアルディオラ監督のマンCとなにが違うのかに触れておきたい。

それが、当時の『SHの役割はあくまでもSBのピン止め』ということだ。現在のSH(4-3-3なのでWG)はハフスペースからの『抜け出し』のタスクもある。

当時は『抜け出し』のタスクを担っていたのがSBで、現在はWG。この変化には確実にこのような意図がある。それが『被カウンター』と『2ndボールの回収』だ。

現に当時のこの試合は2ndボールを回収できず、SBの背後をCFのミリートに使われていた。

グアルディオラ監督はバルセロナ時代で「SBの背後」をどうするかという課題に直面し、そしてバイエルン時代で偽SBを編み出し、2ndボールの回収の問題をネガティヴトランジションの局面で解決し、現在のマンCでウォーカーを起用し、3バック化させる事で被カウンターの問題を克服した。

一昔前の試合を見る事で、グアルディオラ監督が編み出した奇抜な戦術も、突発的に生まれたわけではなく、きちんと段取りを追って今に至っている事がわかる、貴重な試合だと僕は感じた。

 

インテルのSHの役割

一方のインテル。モウリーニョ監督はSHにどのようなタスクを与えていたのかを次は紹介していこう。

①:守備時のタスク

まずは「モウリーニョらしく」守備のタスクから。

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まずはディフェンディングサード。ここでのSHの役割はSBを捕まえる事にあった。

モウリーニョ監督はしっかりとスカウティングを行い、SBがSHを捕まえるので、大外のスペースをSHに埋めさせるタスクを求めた。これが守備時、ディフェンディングサードでのタスク。そしてこのタスクが、攻撃時、カウンター時の大きな役割を果たす。

 

(だが先述したように、メッシとシャビからボールが奪えないので、徐々にSHが中央に寄っていき、SHの背後が開き、SBにそのスペースを使われる事が多くなっていた。)

 

②:攻撃時のタスク カウンター編

攻撃時、特にカウンター時はどのようなタスクを担っていたのか。それは「クロスのターゲットマン」だろう。特に左SHのパンデフ。彼がこの役割を主に担っていた。そして右SHのエトー。彼は右SBマイコンとの崩しの役割を担っていた。では具体的にどのようにカウンターを仕掛けていたのか、解説を加えていこう。

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まず最初にボールをインテルがボールを奪うポイントに少し触れておこう。

インテルがボールを奪うポイントは上の図の丸のエリア。ここでボールを奪う、または跳ね返す事で、ボールを奪う。

そして奪ったボールはすぐに背後へ送る。その優先順位がまずはCFミリートへのボール。

ここを徹底的に狙う事でCBをの意識を中に追いやり、次の優先順位が高い、四角のエリアにボールを出すことができる。

このSBの背後に抜け出すのがSHの役割で、両SHはスピードがあるので、ここで優位に立つ事ができた。

そしてこのように攻撃を完結させていく。

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SHがSBの背後に飛び出す事で、一気に攻撃のスピードを早める。これで走力のあるSBマイコンの上がりを促し、数的優位を作り出し、クロスを上げる。そしてCFミリートが潰れ役となり、SHがクロスを合わせるという攻撃を仕掛けていた。

また、このようなパターンもある。

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このようにCFのミリートがSBの背後に流れる事で中央をあけ、SHにスペースを与える。この形は後半から見られるようになった。

前半の内容をうけて、モウリーニョ監督はボールと同サイドのSHの守備時のタスクを変更し、ボールを奪うことに特化させた。こうすることで生まれた新しいカウンターの形。

試合の流れを読み、そしてすぐに実行させるモウリーニョ監督とそれに応えるインテルの選手。見ていて痛快のものだった。

 

③:攻撃時の役割 ストライカーロール編

そしてもう1つ。それがストライカーロールだ。ペップ・バルサのSHはSBを生かすためのポジショニングをとっていたのに対し、モウ・インテルのSHはよりゴールに近づくためのポジションを取っていた。両者の特徴が出ていたSH。モウリーニョ監督はこのストライカーロールでSHをどのようにプレーさせていたのか。

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このようにある程度押し込むことができると、SHはペナルティエリアの幅、もっというとゴールエリアの幅でプレーをすることが多かった。こうすることで2CFのような形を作り出し、ゴール前で密集を作り出す。

これでクロスを上げた時に開くのがここのスペース。

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ここの大外のスペースにOMFのスナイデルが入り込むことでゴールを奪う狙いがあった。だからボールと逆のSHはサイドを捨てて、ゴール前に入り、ストライカーロールを行う。

もちろん、自分でゴールを狙うのだが、大きな目的はゴールを奪うために大外のスペースを開けること。現にここのスペースにスナイデルが入り込む事で、同点弾、逆転ゴールと奪っている。

モウリーニョ監督らしい、SHに守備のタスクから与え、そしてカウンターで攻撃を完結させる、まさにしてやったりの試合内容だったのではないだろうか。

 

補足:現在と違う点とその変遷

ペップはこの試合から読み解けるようにどんどんその戦術を進化させていった。

だがモウリーニョはどうだったのか。根底にあるものが『守備』なので、戦い方は大きく変わらず、カウンター重視の戦いを続けている。レアル時代、第二次チェルシー政権、マンUと基本的な戦術は変わらない。だが、第二次チェルシー政権時、特にセスクが加わった2シーズン目とリーガを制したこちらも2シーズン目のレアル時代。

この2つのシーズンに関しては、クロップ監督並みのトランジションサッカーで、100ゴール越えでリーガを制し、第二次チェルシー政権では、コスタ、アザール、オスカル、ウィリアン、セスクで同じくトランジションサッカー+ペナ幅アタックを展開し、プレミアリーグを制した。この2つのシーズンほど、モウリーニョ監督が攻撃的かつ、能動的なサッカーを展開していた時代はないだろう。

この時代のサッカーを取り戻そうと試行錯誤しているのが現在のトッテナム政権ではないだろうか。コロナウイルスの影響があり、トレーニングを積めないが、仮に来シーズン、フルメンバーが揃い、しっかりと戦術を落とし込み、シーズンインができるとしたら、プレミア制覇も夢ではないだろう。

マンU時代で味わった、過去の戦い方では勝てない経験。ここからもう1つ上のレベルに上がろうとしているのではないだろうか。

 

まとめ

09-10 CL。10年前で古いものだが、かなり「詰まった」試合だった。当時のグアルディオラ監督とモウリーニョ監督の特徴をはっきりと表している、好ゲームだった。その特徴をしっかりと表現しているのが『SHの役割』だろう。コロナウイルスの影響もあり、時間が余っているのなら、『SHの役割の違い』に注目し、ぜひこの試合を見返して見てほしい。

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終わりに

最後までお付き合い頂きありがとうございます!

ではこの場を借りまして、5つの事について紹介させて下さい。簡潔にまとめているので、この4つの事も覗いて頂けると幸いです!

 

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