ラ・リーガ バルセロナ vs レアル・マドリード 〜個人戦術とチーム戦術の応酬〜

 

 

はじめに

世界最高峰の試合。それがクラシコ。いつものように激しい試合になると思ったが、この試合はとても落ち着いたものになっていた。それも相まってか、結果は0-0のスコアレスドローに。それでもクラシコクラシコ。0-0でもとても見応えのある試合だった。そして要所、要所で見えた「戦術」の数々。世界最高峰のクラブに所属する選手たちだからこそ見ることができるものだったのではないだろうか。では今回はその「要所」で見えた「戦術」を紹介していこう。

 

空間とスペースを見つけるバルセロナ

この試合の大きなトピックスの一つ。それがこのバルセロナGK、CBからの縦パス。この試合を観戦した方なら驚いたプレーの一つではないだろうか。この縦パスがバルセロナの攻撃の生命線の一つとなっていた。ではどのようなメカニズムで縦パスを入れていたのか。

(黒⇨バルサ 白⇨レアル)

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これがバルセロナの縦パスを入れるメカニズム。GK(時にCB)がボールを持つと、ホルダーの身体の向きでどちらにパスを出すかある程度決める。そうするとマドリーが守備のアクションを取る(後に解説)。この時にDMFとIH(主にデヨング)がボールを受けに降りることで、マドリーのOMFとIHを近くに引き連れる。この状況だとバルセロナSBが浮くので、マドリーSBはここを牽制に出る。さらにWGがサイドに流れることでCBを引き連れる。またCFがDMFの視界に入るように降りることでDMFを引き連れる。

同じように逆のWGも中に入り、立ち位置で優位に立つ事でCBとSBを引き連れる。これで空くスペースが上の図でいう黒丸のエリア。ここにGKから縦パスを出し、一気に速い攻撃を仕掛ける。そしてもう一つのパターン。それがCFが受けるパターンだ。それがこちら。

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 これがもう一つの方法。このパターンはDMFがIHをマークしている時に起こり得る現象。この場合は右WGのグリーズマンが中央まで入り込むことでCBを引きつけ、降りるCFをフリーにするという方法。これで前進し、SBが抜け出すことで攻撃の糸口を見出した。『観て』パスを出せる事、『空間』を作るための連動性、『スペース』を使える認知能力、相手の守備戦術に対応できる柔軟性。これらのレベルが高いので観られるプレーだろう。

 

左サイドで優位に立つバルセロナ

サッカーの内容が多少変化しても、あくまでも優位性の作り方は『ポジショニング』だ。それが顕著に現れたのが左サイド。ではどのように優位に立っていたのか。

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このようにレアルの「守備の穴」をうまくついたバルセロナ。特に前半にこのような場面が見られた。この優位の立ち方はシンプルでとても簡単なものだった。それはWGがハーフスペース(グリーズマンが中に入りたがる)にポジションをとる。それに伴い、SBが幅を取ることでレアルの守備の穴をつく。レアルSBは基本的にバルセロナSBを見ることが多かったが、このような状況に陥るとWGの方が危険なポジションにいるのでそこをSBがマークする形になる。そうするとこのようなフェーズに移る。

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このようにレアルSBがWGをマークすることで空いてくるのが黒丸のスペース。ここをSBが使うことでチャンスを広げる。ここをうまく使える理由が4-4-2のブロックに入ったレアルCFベイルの立ち位置。彼がSBをマークするのか、WGをマークするのか、それともIHにプレスをかけるのか、ここがはっきりとせず、迷っていたのでポジショニングがあやふやになり、バルセロナはチャンスを作り出すことができていた。相手のポジショニングを観て三角形の大きさを作り変えるのも実にバルセロナらしいものだった。

 

組織だったレアルの守備

この試合のもう一つの大きなトピックス。それがレアルの守備戦術。ジダン監督がここまで連動性のある、そして組織立った守備戦術を使ったことはなかったのではないだろうか。ではどのような守備を採用していたのか。

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このようにレアルの守備は基本ハイプレスで人を捕まえる守備戦術を採用。これの狙いとして後ろから丁寧にボールを繋がせずにロングボールを蹴らせる意図と繋ぐならば、引っ掛けてショートカウンターという狙いが明確にあった。そのためにCBに対してCFとIH(バルデルデ)がマーク、DMFに対してはOMF、IHに対してはCHとDMF(時にCF)SBに対してはSBが牽制するというものだった。これでレアルはバルセロナのお株を一つ奪う事に成功した。だが先述した通り、バルセロナのGK(CB)からのフィードで突破されていた。ジダン監督はここのケアは特にせずに個人の守備能力で対応させていた。それで対応できてしまうのがレアルの強さで、ここでも世界最高峰の個人戦術を見受けることができた。

 

優位に立たれた左サイドの対応

ここでも見せたジダン監督の修正能力。彼のこの能力は高いと言って良いのではないだろうか。ではどのような対応を見せたのか。

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このようにDMFがDFラインに入ることでCBがハーフスペースにポジションを取っているWGにCBがマークに行ける。そうするとどうなるか。バルセロナSBに対してレアルSBが迷いなく対応にいくことができる。そして一番の不安点だったCFのあやふやなポジショニングをIHにプレスに行ける位置に修正。これでしっかりとブロックを作り出すことで、ペナルティエリア内からのシュートを打たせる場面をほとんど作らせなかった。

 

メンディとバルデルデの存在

これは攻撃にあたり、この2人が特に効いていた。ではどのように効いていたのか。

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これがCHとSBが効いていた理由。レアルの攻撃はCFのベイルが幅を取り、CFのベンゼマとOMFのイスコが中央付近でプレーすることで、CHのバルデルデがハーフスペースに入れるスペースが生まれる。これが主にショートカウンターを仕掛ける時のメカニズム。そしてもう一つ。これがサイドを変えるパターン。これはビルドアップから見受けれることができた。意図的に左サイドに全体を置き、サイドを変えることで一気にサイドを制圧する。SBメンディの身体能力、特に走力の部分で秀でたものがあるからこそできる攻撃ではないだろうか。

 

まとめ

まさに0-0でも面白いと言われる試合だった。その理由として選手個々人の戦術理解度の深さと技術の高さが相まっているからではないだろうか。このような割と落ち着いたクラシコもまた血張った見方ができて興味深いものだった。結局ラ・リーガのトップにいる両チーム。伏兵が多く潜むラ・リーガで今シーズンはどのような結果を残すのだろうか。世界最高峰の両チームの試合を今後も注目していきたい。

 

終わりに

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