師弟対決はペップに軍配!カバーとプレスと個人の関係とは?【FA4回戦 マンチェスター・C×アーセナル】

みなさん、どうも。今季初の師弟対決。軍配が上がったのはペップ。アルテタはペップに対してしっかりとプレッシングでズレを消していく対応を見せて、多くのチームが苦戦する戦術を押さえ込むことに成功した。前半の結果がその象徴だろう。

その中で冨安の対応も繊細で堅実なもので、グリーリッシュの対応も行いながらホールディングのカバーも行うという離れ業も披露した。

 

後半に入ってペップが行った対応と、人が変わったことによる遅れがマッチしてしまい、アーセナルは負けてしまったが『今季こそ本物』ということをサポーターに見せつける試合内容であったことも間違いない。

今回はこの一戦をYouTubeで振り返ってみましたので、ご覧ください!

www.youtube.com

やっぱりモチベーションが上がるので、どうぞポチッとチャンネル登録もよろしくお願いします!

モチベが上がると良いものをもっと発信できるので、お願いします!!

また後日、『チャンネルとライン間の埋める重要性』を考えた記事を更新しますので、お楽しみに!!!

 

【サカはなぜ有利な状況でボールを引き取れるのか?】アルテタが仕込んだサカの引き取り方!

リーグ首位を直向きに走り続けるアーセナル。アルテタが仕込み、落とし込んだことは確実にチームに行き渡り、そして確かな幹となった。そしてその太く強く育った幹の周りを彩るのは若き選手たち。

ウーデゴール、マルティネッリ、サカ、エンケティア、サリバ、ホワイト。ジンチェンコ、トーマスの安定感。そしてジャカの新境地。その他にも貢献している選手が多くいるのもアーセナルの好調を支えているのは確かだ。

 

そしてアーセナルの右サイドで異彩を放っているのがサカだ。アルテタの下で確かなスターに成長しているサカ。彼のボールの引き取り方はアルテタから学んだことではないだろう。

ボールを受けた時点でマーカーよりも優位な状況でドリブルに入ることができるようになっていて、さらに周囲に多大な影響を与えることができている。

では今回は「アルテタが仕込んだサカの引き取り方」についてを考えていこう。

動きながら受けるサカ

ここから文章で考察を行っていくが、YouTubeショートでサラッと解説した動画をアップさせて頂いている。

こちらでも確認してみてほしい。

www.youtube.com

ショート動画もどんどん上げていくので、ポチッとチャンネル登録もして頂けると嬉しい限りです。やっぱり登録者数が増えるとモチベーションになるので、どうかチャンネル登録を宜しくお願いします!

 

では本題に戻って早速、サカのボールの引き取り方についてを考えていこう。

『その場』で引き取る場合

動きながら引き取る場合を考察していく前に、まずは「その場」で引き取る場合についてを説明していこう。

その場で引き取るはこのような状況のことを僕は指している。以下の図をご覧になってほしい。

例えばこのようにSBからボールを引き取るときに、レーン移動をせずに縦に降りてボールを受ける場合だ。そうするとSBを動かすことができなくなる。もちろん大胆に降りるとマーカーを縦に動かすことができるが、これでは出し手と近い状況になってしまうので引き連れたマーカーがそのまま出し手までアタックすることが可能になる。

だからこそ、あまり降りずにボールを引き取ることが多くなる。(当然、数多の状況があるので状況によりけりだが。)

そしてその場でボールを引き取ると「相手を動かせない」と同時に自分は「背負った状態」で1vs1に入らなければならない。相手を背負う(=後ろ向きのプレー)と前を向く労力が必要になり、何よりも不利な状況から1vs1に入らなければならないのでドリブラーにとってはかなりのストレスにもなるだろう。

さらに周囲のサポートにも影響を与えてくる。以下の図をご覧になってほしい。

このように引き取った状況が不利(後ろ向き+マーカーを動かせてない)ので周囲のサポートも後ろになる。こうなるとサポートの選手たちも近くの相手選手やマーカーを動かすことが難しくなる。

このようにサポートが後ろになるので、引き取った選手と同様に相手を動かすことが難しくなる。だからこそ、サイドで圧縮されやすくなってボールを失いやすい。さらにこの状況でボールを失ってしまうと「相手が整った状況」でボールを奪われてしまうので、被カウンターになってしまうことが多くなる。

また、ボールを失わずともサポートが後ろになるので「やり直し」を行わなければならない。この「やり直し」は能動的(ポジティブな)なものではなく受動的(ネガティブな)なものになるので、再び崩しに入るための更なる労力が必要になる。これを繰り返してしまうと、やはりストレスが溜まり相対的にミスは多くなってしまう。

 

ただ捕まった状況でも3人目や4人目の関わりがあった場合には細かいパスワークで崩すことも可能だし、ワンタッチでボールを回す技術とサポートの的確性があれば一気にフィニッシュワークまで持っていくこともできる。何度も触れるが、やはりサッカーは数多な状況があり、絶対的なものはない。だからこそその状況でもっとも良いとされるプレーを選択して実行する必要がある。

そしてアルテタがサカに教授した動きながらボールを引き取るプレーはサカの特徴を存分に生かし、周囲にも良い影響を与えている。ではどのようにしてサカがボールを引き取っているのかを説明してこう。

「動きながら」引き取る場合

これは何度も行っていることで、確実にアルテタが落とし込んだことだ。ではそれがどのようなものなのか。こちらの図をご覧になってもらいたい。

このようにホワイトからボールを引き取るときに、サカは内側に入りながらボールを引き取る。これを行うポイントがあって、それが「マーカーのベクトル」の作り方だ。守備のベクトルを前向きに作り出し、急に方向転換をすることで守備ベクトルを自分から逃す。こうすることでマーカーから離れた状態でボールを引き取ることが可能になっている。

そしてこのプレーの大きなメリットとして、有利な状況で1vs1に入れることだ。では有利な状況とはどのような状況なのか。それがマーカーを半分置き去りにした状況でボールを引き取れる状況だ。だからボールを引き取った時に、相手よりも体が半歩前に入っている。こうなるとボールを守れるし、最悪ファールをもらうことが可能になる。アルテタはサカのドリブル能力を生かすために、そしてよりゴールに向かうための無駄な労力を省くために、このような引き取り方をサカに教授した。

そしてこのプレーを継続して行っていくと、マーカーの立ち位置を内側に強制移行することができるので、「その場」でもボールを引き取れて対面で1vs1に入ることも可能になる。これでサカは常に複数の選択肢をマーカーに与えながら、ボールを引き取ることができるようになっている。

 

さらにサカがこの動きを加えることで相手を動かすことも可能になる。だから周囲のサポートの位置も当然変わってくる。この図をご覧になってもらいたい。

まずサカが内側に入りながらボールを引き取ると、マーカーを引き連れると同時に内側の選手(ここではCH)も誘き寄せることが可能になる。すると当然、大外(SBが動くので)が空き、誘き出したCHのマーカー、ここではIHがフリーになれる。

要するにこのような状況になる。ここからアーセナルは主に2つのパターンがある。

1つ目がSBがオーバーラップするパターン。

このようにサカがSBを動かすことでその外側をオーバーラップ。これでサカに対して更なる選択肢を与えてDFを混乱させる。当然ボールを失ったときのためにIHが後ろのサポートを行うと同時にネガトラ要員として機能する。これはポジティブなサポートで、前に出るため、もしくは新たなる展開を促すためのサポートになっていて、現にここでウーデゴール(トーマスのこともある)が受けると逆サイドまで展開、またはウーデゴールの異次元かつ糸を引くようなスルーパスで一気にフィニッシュまで持っていく。

このパターンは多く見受けることができ、ホワイトのオーバーラップするタイミングも絶妙だ。

そしてもう1つがこちらになる。

そんなに頻繁には見られないが、IHがサカの外側を回るパターン。これは試合に2、3回見られる程度のもの。この場合は後ろのサポートをSBが行うことが多くなる。だからサポートとネガトラ役をホワイトが担うパターンだ。

アーセナルはサカが内側に入ってボールを引き取ることで相手を動かし、そして周囲の選手もそれに合わせて動きを加えていく。全てはゴールに向かうためのものであり、そしてゴールに向かうための無駄な労力を省くためのものでもある。

 

先ほども触れたが、サカがこの内側の引き取りを行うことで「その場」で引き取ることも可能になる。そうすると、後ろのサポートを行いってリターンを受けるプレーもネガティブなものではなく、ポジティブなものになる。なぜならサカがその場で引き取ったときに、時間があり相手を誘き寄せることができるからだ。

このようにアルテタはサカの個人戦術を向上させたことで、サカをプレミア屈指のドリブラーに仕立て上げ、そしてチームに多くのものをもたらす選手に育てあげた。

 

アルテタが築き上げた土台の上に多くのものが積み重なっている。19年ぶりのプレミアリーグ制覇まで愚直に走り続ける若きアーセナル。残り半分ほどとなった今季をこのまま突っ走ることができるのか。優勝の行方は若きドリブラーの出来にかかっているかもしれない。

 

最後までご朗読ありがとうございます。これからは個人戦術に焦点を当てた記事も書いていこうと思いますので、どうぞお楽しみに!

YouTubeではショート動画で短くポイントを押さえたものをアップしています。ポチッとチャンネル登録ボタンを押すだけなので、ぜひこちらのチャンネル登録をして頂けると嬉しいです。

www.youtube.com

やっぱりモチベーションになるので、どうかよろしくお願いします!

 

ではまた次回の記事もお楽しみに!

熱狂へ誘う最高の試合!アーセナルが逆転できた理由とは!?【プレミアリーグ第21節 アーセナル×マンチェスター・U】

どうも!みなさん!この試合見ましたか!?

僕は起きれずにリアタイできず、ひどく後悔しています。ですがディレイで見てその後悔も薄れました。なぜならとても興奮する、熱狂へ誘ってくれる両チームがいたからです。

かつてはプレミアリーグのシンボルだった両チーム。小学生の頃にブイブイ鳴らしていた両チームにこんな面白い試合をされると、どこか懐かしく、嬉しい気持ちにもなりました。

 

試合内容もかなり面白いもので、この勝利でアーセナルはまた1つ、優勝に近づきました。さらに自信の深まる一戦だったのは間違いないでしょう。

では今回、アーセナルがどのようにして攻守に渡ってユナイテッドを押し込むことができたのか。それをYouTubeで考察しましたのでどうぞご覧ください!

www.youtube.com

ラジオ感覚で聴けるので、是非とも!!!

ポチッとチャンネル登録もして頂けるととても嬉しいです!!!

ではまた次の記事もお楽しみに!!!

 

2022ー23 プレミアリーグ 第7節 マンチェスターシティvsトッテナム マッチレビュー~見逃してはくれない相手~


f:id:kwsk_bito:20230123214458j:image

 

マンチェスターシティ4-2トッテナム

得点者(TOT)
44' 21デヤン クルゼフスキ
45+2' 12エメルソン ロイヤル

得点者(MCI)
51' 19フリアン アルバレス
53' 9アーリング ハーランド
63' 26リヤド マフレズ
90' 26リヤド マフレズ

両チームのフォーメーション

前書き

 エリザベス女王崩御を受け延期となっていたこの試合。両チーム共に直近の試合で大事なダービーマッチを落としているため、この試合で嫌な流れを払拭したいところ。

 トッテナムは前節のアーセナル戦から4人スタメンを入れ替えて臨んだ。怪我でワールドカップ明けから離脱が続いていたベンタンクールは、この試合から復帰を果たした。

 対するシティは前節のユナイテッド戦から、5人のスタメン変更。ストーンズがこの試合から復帰し、右SBには18歳のリコ ルイスがスタメンを飾った。

効果的なプレスだったのは?

 両チーム共にハイプレスで試合に入る。シティは4-1-4-1の陣形を作りつつ、IHかWGがスイッチ役となってボールホルダーにアタックする入りを見せた。

 対するトッテナムは、ケインがGKのエデルソンまでスプリントをかけながら出て行くシーンが多め。前から追いかけつつサイドに誘導したい狙いがあったと思われる。

 開始早々にエデルソンからアケと繋いでグリーリッシュにボールが入った際に、ロメロとエメルソンがサンドして奪ったシーンは、1つの理想だったと思う。

 以前までのトッテナムvsシティの試合と言えば、トッテナムがローラインで5-4-1を作って構えつつ、カウンターで一気にひっくり返す形が多め。昨シーズン、エディハドで劇的勝利を収めた際も、ブロックを組んで速攻への好機を伺い続けていた。

 それでも今シーズンはハイプレスに行く傾向が強めなトッテナムは、この試合でもその流れを踏襲。そこが、直近の対戦カードと比べての変化であろう。

 しかし相手はシティである。プレス回避で言えば相手の方が何枚も上手である。開始早々にアケからグリーリッシュに当てて、レイオフからボールを受けたロドリから、2CHの裏で構えたギュンドアンという形でボールを動かされ、前進を許してしまっている。こうなるとトッテナムはミドルブロックに移行。5-2-3っぽい形で守りを固める策に出る。

 シティの保持はリコルイスを内側のレーンに入れた3-2-4-1っぽい形。トッテナムの2CH+3トップの五角形で守りつつ中央を封鎖するのに対し、五角形の中にロドリとリコルイスを入れる。そこからケインの脇でボールを受けつつ、シャドーが絞って来たら外に張るCBに届ける形で前進を試みていた。

 一方でトッテナムの保持で言えばベンタンクールの復帰が大きかった。中盤でボールをキープすることで、相手のプレスを無効化しつつ左右に振り分けられることが出来るので、保持の場面でチームに落ち着きをもたらしていた。

 特に5:26~5:30までの、プレスに行って陣形の乱れたシティの間を取るポジショニンが素晴らしかったので皆さん見て欲しいところ。

 それでも試合はシティペースで進む。トッテナムが前から行くことによって、縦が間延びするケースが多め。その際、間で浮くギュンドアンの存在がとても厄介であった。

9分のシーン

 8分のシーンではトッテナムのCH前に顔を出してレイオフをしたり、9分の場面では逆にCHの裏で受けたしていた。そこからアルバレスを使った加速するのが主な流れである。

 コンパクトなスリーラインを維持出来るミドルブロックであれば、常に人を捕まえることが出来るため間延びすることは無い。そのためそんなに怖くは無かった。しかし、前から行くことで選手間が開いてしまい間が空いてしまう。そことのリスクは、常に隣合わせの中で試合は続いていた。

 よってトッテナムのハイプレスが効果的だったかと言われれば何とも言えない入りであった。

適応からの2得点

 基本的に敵陣に押し込む時間が長かったのはアウェイのシティである。押し込んだ所で前線で幅を取る両WGにボールを届けつつ、WGの単騎突破orサポートを使ってファーサイド目がけたクロスという感じである。

 そこの匙加減はシティWGに対しトッテナムのDFが何枚で対応して来るかで決めていた風に思える。1vs1なら単騎で剥がしに行くし、ダブルチームで対応に来るならバックパスでサポート役の選手を使うという感じである。

 ただ残り30メートルでの攻撃には苦労をしていた印象だ。特にグリーリッシュに対してはエメルソンが奮闘を見せていたように思える。

 この試合のエメルソンは良かったと個人的には思う。裏抜けの回数も増えたし、落ちて受けた際は斜めは横にボールを刺せるようになるなど、ビルドアップや保持での欠点が改善されつつあった。

 話は再び試合の方へ。試合の半ばに差し掛かると、トッテナムが守備で人を捕まえられるようになる。前からのプレスに行く際の着いて行き方は間違っていない!と思える時間帯が前半の中盤以降から増えて行った。特に前から追った際に、捕まえた受け手へと誘導できるようになったのは序盤からの変化だと取れる。

 しかし、ボールを奪える訳では無いのが痛かった。クリーンにボールを奪ってマイボールに出来れば良いが、シティの選手にボールを隠されたりしてファウルになることが多め。リコルイスとベンタンクールの所はそれが顕著であった。よって、流れは止めれられるけど保持は出来ないジレンマに襲われていた。

 それでも人を捕まえる形は時間が進むごとに適応は出来ていったように感じる。自陣からのビルドアップが上手く行かなくなった事により、降りてくる回数が増えたマフレズに対してはペリシッチが後ろから対応。前を向かせない守備を続けていたし、32分の場面ではホイビュアとサンドでボールを奪い切っている。

 これは右サイドでも同様。降りてくるグリーリッシュにエメルソンが対応してボールを奪うシーンも見られた。

 ハイプレスというよりも、マンツー気味で捕まえに行く守備で試合の主導権を握り始めたトッテナム。このあたりから、何度かシティゴールに迫ることが出来ていた。

 一方でトッテナムがプレスの手を緩めればシティの攻撃が牙を剥く。長いボールからハーランドを使ってひっくり返したりと脅威となった時間帯はあったが、そこを何とか凌いでいた。

 ハーランドに訪れた2つの決定機を凌いだ直後。前線からプレスをかけに行くと、エデルソンのパスを受けたロドリからベンタンクールが高い位置でボールを奪い最後はクルゼフスキが決めてトッテナムが先制に成功した。ようやくハイプレスが結実した瞬間であった。

 更にその直後にはカウンターアタックが発動。右の外に開いたクルゼフスキから、エリア内のケインにボールが入ると、驚異的な粘りからシュートを放ちGKが弾いたボールをエメルソンが頭で押し込んでネットを揺らした。

 何と前半の終盤立て続けに2点を奪ったトッテナムが前半をリードして折り返した。

隙は見逃してくれない

 ここまでリーグ戦で先制した試合は6勝1分と負けが無いトッテナム。このまま勝ちパターンへとシティを引きずり込めるかと思ったが、そう甘くは無かった。

 シティはGKエデルソンがシンプルに前に蹴り出すことが増えた印象。降りるリコルイスとロドリに対し、トッテナムのホイビュアとベンタンクールが着いて来るため、中盤に大きな空洞が生まれる。そこを利用したかったのだろう。

 また非保持も積極的に前から出て行く。降りるクルゼフスキに対してはアケがタイトに対応をする。そこで1つ起点を作れなくなったのも大きかった。

 そんな中で迎えた51分。ケインがエデルソンまでプレスに出るも、後ろが着いて来ずにアカンジがフリーになっていた。そこから前進を許すと、フリーになっていたリコルイスで加速を許す。そのまま、右サイドで受けたマフレズに対しペリシッチが軽い対応を見せてクロスを入れられると、ゴール前の混戦をアルバレスに押し込まれ1点を返された。

1つ目の原因

 ここの原因は3つ。1つはケインのプレスに対して後ろが合わせて着いて来なかったこと。ここの押し上げは遅かったように感じる。

2つ目の原因への解答

 2つ目は浮いたリコルイスのところ。アカンジが出し所を探していた際に、上記の画像のようにソンが戻れば防げていたように思える。3つ目はペリシッチの対応。あそこで縦に行かれるのは少々厳しい気がする。

 色々な要因が合わさって見事に押し切られたトッテナム。更にその1分後には、自陣でのビルドアップミスからシティに押し込まれると、ロドリとのワンツーに抜け出したマフレズに折り返され、最後はハーランドに決められてしまう。わずか1分間で同点に追いつかれた。

 こうなるとトッテナムは苦しい。折角の2点リードが無に帰した瞬間だった。

 両サイドから前進に関しては、相手がしっかり捕まえに来るので中々難しい時間が多かった。それでも、クルゼフスキがアケを剥がす、もしくはここの対応が緩ければ前進出来るシーンは続いていた。しかし、こかは五分五分の勝負。確実に勝てる算段では無かった。

 それでも60分。クルゼフスキに対しアケが緩い対応を見せると、そこからクルゼフスキの落としを受けたダイアーが楔を入れる。ボールを受けたケインが落としたボールに走り込んできたクルゼフスキが運んでマイナスに折り返し、最後はペリシッチがシュートを放つがリコルイスに防がれてしまう。

 後半最大の決定機を逃したトッテナム。再びシティに押し返される時間が続くも、そこをカウンターで応戦する形に出る。

 だが、迎えた63分。シティに左右に揺さぶられると、ロドリのサイドチェンジをインターセプトしようとしたペリシッチがミス。ボールを拾ったマフレズに縦突破から右足で二アサイドを撃ち抜かれ逆転を許してしまった。

 完全に試合を主導権を持って行かれたトッテナムはメンバー交代で流れを変えようとするが、ここでゲームチェンジ出来る選手が不在であることが響いてしまう。セセニョンが投入された直後は左サイドからプレスを剥がせるようになったものの、逆転までの一押しが足りない。

 対するシティは前からのプレッシングを更に強める。これによってトッテナムのビルドアップ隊がバタつきを起こしてしまっていたし、シティにボールを握られる時間帯も増えて行った。

 何とかして同点に追いつきたいトッテナムはボールを奪い返すために前からの圧力を強めるが、エデルソンのキックによってプレッシングが引っくり返されるようになる。キックの先がトッテナムのDF3枚に対し、シティの攻撃陣4枚という地獄絵図が起ったりしていた。

 その結果90分にエデルソンのロングキックの処理を誤ったラングレからボールをかっ攫ったマフレズに再びをネットを揺らされ万事休す。試合は4-2で今シーズン初の逆転負けを喫した。

雑感

 前半の中盤から終盤にかけて流れを掴んだあの時間帯はとても良かったように思える。そこで2点も奪えたし、非常に良い前半の終わり方が出来たと評価しても良いだろう。

 ただ、後半クローズに持ち込めなかった。特に色々な要因が重なって喫した1失点目でバタつきが生じ、その流れのまま同点に追いつかれたのが痛かったように感じる。やはりシティレベルになると、ああいうミスは見逃してくれない。それに加え、ホームの声援という追い風も彼らにはあっただろう。

 これで1週目のビッグ6との対戦は1分4敗。それだけで勝ち点を14も落としてしまっている。

 今のトッテナムには、ビッグ6相手に真っ向から戦える力があるかと言われれば疑問符が付いてしまう。ビッグ6との対戦は残り4試合。そこでこれまでのハイプレスを続けるのか、違う形で戦うのかは気になるところだ。

見返しツイート

今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

Twitter↓

twitter.com

 

Blog↓

blog.livedoor.jp

 

note↓

note.com

2022ー23 プレミアリーグ 第20節 トッテナムvsアーセナル マッチレビュー~いつもよりマシではダメ~


f:id:kwsk_bito:20230119224822j:image

 

トッテナム0ー2アーセナル

得点者(TOT)
なし

得点者(ARS)
14' オウンゴール
36' 8マルティン ウーデゴール

両チームのフォーメーション

 

前書き

 現在5位に位置づけるトッテナムは、プレミア首位を走るアーセナルとのノースロンドンダービーに臨んだ。

 トッテナムは前節のパレス戦からスタメンを3人変更。クルゼフスキが怪我から復帰し、セセニョンが左WBで起用された。そしてサールがプレミア初先発をこの試合で飾ることとなった。

 対するアーセナルも前節のニューカッスル戦と同じ11人を起用している。

プレスに抗う入り方を見せるも

 今シーズンのアーセナルは、プレミアリーグの中でもトップクラスにプレッシングの精度が高い。それに対して保持面で不安を抱えるトッテナムが、どのように前進していくかがこの試合の1つの注目ポイントでもあった。

 開始早々には、トッテナムのビルドアップ隊であるスリーバックに対して、エンケティアと両WGで枚数を合わせるようなプレッシングに出て行く。そこからセセニョンにはホワイトが出て行く形で対応をしていた。

 それでも2分の場面でトッテナムがズレを生み出すことに成功する。ロメロの楔をハーフレーンで受けたソンにホワイトが絞って対応する。これにより、大外のセセニョンが浮いたという構造が生まれた。

 アーセナルの非保持は4-3-3気味でレシーバーとなるサールとホイビュアに対してはウーデゴールとジャカがマークに着く。そのため、パーティがアンカー気味になる。その脇にソンが入ることによって、ホワイトを内側に引っ張り出し、大外を空けたという流れだ。

 セセニョンを起用した意図は非保持でサカを対応するだけでは無く、彼が得意とするオフ・ザ・ボールの動きで、フォーメーションの噛合わせた上で起きるズレで優位を作りたかったからなのだろう。

 これと似たようなシーンは4分の場面でも見られている。この時はカウンターからの攻撃だったが、ソンが内側を走ることでホイワトを引きつけ、ケインから大外のセセニョンにボールが入った。この時にGKとDFの間にクロスボールを入れることが出来ていれば、得点の可能性は上がっていただろう。

 しかし、徐々にアーセナルのプレッシングに対して対抗手段が無くなっていく。7分には、マルティネッリの外切りのプレッシングを受けたロリスがキックミス。そこからボールを回収され、エンケティアに決定機を作られてしまっている。

 また、9分の場面でもゴールキックからのビルドアップを対応されてしまっていた。トッテナムからしてみれば、GKを含めて8vs6の数的優位の局面だったが、サイドに流れたホイビュアに所にパーティが着いて行って対応をされてしまっている。

 そのため10分手前ぐらいから敵陣へと前進出来ず、アーセナルにハーフコートでプレーされる展開が続いてしまった。何とか敵陣まで進出したとしても、崩せに無い展開が続いていた。

 左のワイドで幅を取るセセニョンに対してはサカが戻って来るため、アーセナルは5バック気味で守ることが多め。そのため、相手陣地深くではフォーメーションの噛合わせで生まれる優位を付けられない時間が多かった。

 一度攻撃が詰まりバックパスで仕切り直しと行きたいが、ここに対して強烈なプレッシングが来るため、結局GKまで下げてしまう展開が続いてしまった。その結果、なかなかアーセナルゴールを脅かすことが出来なかった。

構造上起こった2失点

 トッテナムは序盤はいつものようにプレッシングに出て行く時間が多かった。しかし、ジンチェンコの所から脱出されてしまうケースが多く、この試合でもハイプレスが刺さることは無かった。

 それでもこの試合でトライしていたのは、5-4-1のブロックを極力コンパクトにする形だ。

 アーセナルの保持はジャカとウーデゴールがIHっぽい振る舞いをすることが多め。ここに対し、HVが迎撃しやすいように縦の距離感を狭くするという守り方をしていた。

 狙いとしては、ここで奪ってからの素早いショートカウンターだったはず。アーセナルの陣形が整う前に高い位置で奪って、攻め立てたい狙いがあったはずだ。

 それが上手く行ったのが12分のロメロのインターセプトだろう。パーティが運んでジャカに差した所をロメロが素早い出足でボールカット。このように縦がコンパクトであれば、迎撃もしやすいし5バックの良さは活きる。

 しかし、これをやる上で欠点が2つあった。
 それは

  • パーティを自由にさせてしまっている

  • ハイラインの裏が空いている

 という2点だ。基本的に出し手に対して制限をかけられない守り方であるため、自由に蹴られてしまう。それだけで無く、「ハイライン+出し手への制限がかからない」という合わせ技であるため、一気にハイラインの裏に出来るスペースを使われる可能性は大いに孕んでいた。

 その結果が1失点目である。ケインの裏でフリーになっていたパーティにハイラインの裏にボールを蹴られると抜け出したサカが抉ってクロス。これがロリスの手を弾いてゴールに吸い込まれてしまった。

 この守り方をする上での問題をアーセナルに突きつけられたところの失点は痛かった点。一応ボックス内の埋め方を見る感じ、自分たちで弱点は理解していたと思う。そのためエリア内の枚数は足りていたからクロスのケアは出来ていたように思える。だが、オウンゴールという虚しい結果で先手を奪われてしまったのだ。

 先手を許したトッテナムは1点を返そうと攻めに出る。18分には、セセニョンのダイアゴナルの動きからソンの決定機が生まれるもラムズデールに阻まれている。

 それ以降は空回りする時間が多めだった。押し込まれた所からひっくり返そうとしてもファーストタッチが乱れたり、その次のパスが通らずアーセナルにサウンドバックにされる時間帯も多くあった。

 ここは純粋に受け手と出し手の精度もあったし、アーセナルの素早いカウンタープレスやセカンド回収によって起こったと感じた。

 それだけで無くアーセナルの守備も修正をしていた。前半の頭で見せたソン→セセニョンのラインに対し、サリバがソンを監視することで解決。ホワイトはそのまま大外のセセニョンを見れば良いため、前半頭のようなルートを確保出来なかった。

 そうなると縦に攻め急ぐしか無いトッテナム。しかしそれだけでは正直すぎてしまう。相手が一番警戒してるのは真ん中からの攻撃だし、そんな一番通らなさそうな所に縦パス入れても引っ掛かるだけだ。ここでは、外を経由するなどの気転を利かせるべきだった。急がば回れである。

 それに加え縦に縦に急ぎすぎてもひっくり返されてしまうだけである。それが起ったのが2失点目のシーンだった。

 ロリスのキックを回収されると、パーティに3人が剥がされて逆にカウンターを受ける。最後はウーデゴールに見事なシュートを決められ2失点目を喫した。

 その後トッテナムに訪れたチャンスは前半のアディショナルタイム。ホイビュアのプレスからボールを奪ってそのままクロス。これにケインが合わせるがGKに阻まれた。

 前半の最後に見せた前から奪いに行くこのプレーが後半から見られることとなる。

時間限定のハイプレス

 後半に入ってから、トッテナムは前半よりもアグレッシブな入りを見せる。この後半からギアが上がるのは最近のトッテナムの流れであり、ここで1点を取れた試合はモノに出来ている。

 保持ではWBを経由しながらアーセナルの4バックに生まれるギャップを突いたりと、徐々に試合の流れを掌握して行った。

 そしてハイプレスに完全シフト。ケインが頑張って走ってプレッシャーをかけることでアーセナルにボールを蹴らせ、セカンドボールを素早し出足で回収していた。

 しかし得点が奪えない。50分のケインのシュートや52分のケインとのワンツーで抜け出したセセニョンのシュートもプレッシングからの素早いセカンド回収で作ったチャンスだったが、ラムズデールの牙城を崩すことが出来なかった。

 またこの試合で気になったのはクルゼフスキのところ。怪我明けということもあり、キックの精度が冴え渡らないシーンが多め。いつもであれば、無慈悲に沈めるカットインからのインスイングシュートを放つ場面が多くあったが、この試合は枠を捉えられなかった。

 後半の序盤にパワーを振り絞ってハイプレスに出たトッテナム。これを「前半の頭からやって欲しい」という意見もあったが、1試合を通してハイプレス出来ないチームが、前半の頭にパワーを出しても最後まで持たない筆者は思う。

 それに初手からフルスロットルで行っても、今のアーセナルなら早い段階で慣れてしまうはずだ。ここは、ワールドカップで日本代表が、ドイツやスペイン相手に後半からスイッチを入れたのと同じ作戦である。それにより、相手をバタつかせる作用もあったし効果的だったと筆者は感じた。

 なので、前半は死んだふりをしつつ、後半頭から奇襲をかけるこのパターンが、現状のベストなのでは無いかと思う。

 それでもこの時間帯で得点を奪えなかったのは響いた。やはり押し込んでからの崩しの精度は課題。両シャドーがボールサイドによってオーバーロードを作ったりしていたが、全く持って効果的では無かった。

 保持での陣形が乱れればアーセナルのカウンターアタックも刺さってくる。そのカウンターからピンチを招き、エンケティアに試合を決められそうな決定機を作られたが、ロリスのビッグセーブで難を逃れた。

 トッテナムは途中交代でもう一度ギアを入れ直そうとする。しかし、ビスマとペリシッチを入れたタイミングで4-4-2に変更。恐らく攻撃に出たかったと思うが、ここでバランスが崩れてしまったように感じる。

 アーセナルもティアニーを左SHに入れてプレス隊として起用させたり、パワープレーに出るトッテナムに対して冨安を入れてケアするなど、試合巧者っぷりを見せつけた。

 トッテナムもパワープレーの際に殆どの選手がゴール前に張り付いてロングボールを待機していたがそれではダメである。

 アーセナルのDF陣はボールホルダーにしっかり寄せていたため、数人の連携から剥がさないとクロスは飛んでこない。1vs1で剥がしてクロスまで上げてくれ!はあまりにも無責任過ぎるし、そうなるとジリ貧になってしまうだけだ。

 後半は内容的に盛り返すことは出来たが、結果は0-2で敗戦。13ー14シーズン以来のシーズンダブルとなってしまった。

雑感

 試合終わっての率直な感想は「まぁいつもよりはマシだったな」という感じであった。首位を走る相手に対し、後半の頭に見せた奇襲でバタつかせることに成功。そこから再三チャンスを作れていたし、ここ数試合の無気力な試合に比べれば内容的に盛り返せたのはOKなのかなと思ってしまった。

 しかし、そう思う時点でもはや負け組に両足を突っ込んでしまっているのだ。相手はライバルチームである。幾ら実力差があるとは言えど、ここで満足したら成長する事は無いであろう。

 何故アーセナルとこんなに差を付けられてしまったのか。チームは何を目標に何処を目指すのかをもう一度考えられる試合となったと思う。

 この試合を見て首脳陣を何を思ったのか。今後の「クラブの方針」に向けての良いカンフル剤になればと思う。このままでは本当にダメである。

 最後に、サールは良かったと思います。以上。

見返しツイート

今回はおやすみ。

 

(編集者:川崎人)

 

Twitter↓

twitter.com

 

Blog↓

blog.livedoor.jp

 

note↓

note.com

2022-23 トッテナムの前半戦レビュー~設計図が無ければ新築は建たない~

f:id:kwsk_bito:20230119224810j:image

 

始めに

 気がつけば2022-23シーズンのプレミアリーグも後半戦に差し掛かろうとしている。我らがトッテナムは現在5位。僅差ではあるもののCL圏内からは外れてしまっている。

 今シーズンはコンテ政権2年目というシーズンで有り、チームの完成が期待される年であった。また、この夏にリシャルリソン、ビスマ、ラングレなどの実績のある選手の補強も慣行。ここ数年は寂しかった夏が続いていたが、久々にワクワクするような移籍市場を過ごせたことにより、ファンの期待も高まって当然だろう。

 しかし、なかなか不安定な戦いが目立っているのは気になる部分。リーグ戦では先制点を奪われた試合が18試合中11試合と非常に多い。その中で勝ち点は拾えているのは純粋に凄いことなのだが、ビック6相手に1分3敗(延期されたシティを除いて)と、ライバルに差をつけられてしまっている。

 そんなトッテナムが前半戦を戦ってどうだったのかをこれから書いていこうと思う。所謂前半戦のレビューだ。

 今回は

  • 昨年の違いから見える今季目指していること

  • 課題となっている部分

  • 今後の展望と筆者の考え

 というように、3つの章に分けてみた。最後まで読んで頂けると嬉しいです。

昨年の違いから見える今季目指していること

ハイプレスについて

 昨シーズンまでのトッテナムと言えば、5-4-1でブロックを自陣に形成し、ローラインで守ることが多めだった。自陣を人で埋めながらコンパクトに守ることで中盤やサイドで囲い込んでボールを奪い、ロングカウンターで相手ゴールに奇襲する形がメインウェポンとなっていた。

 しかし、今シーズンは撤退するよりも前から捕まえに行く傾向がとても強い。開幕戦となったサウサンプトン戦でもハイプレスでボールを奪いに行くシーンがあった。ここは、昨年と大きく違う部分の1つだろう。

 ハイプレスに行く理由は

  • 「高い位置でボールを奪うことで、ショートカウンターを成立させる」
  • 「相手からボールを取り上げて自分たちが保持する時間を増やす」

 という2つ狙いがあるように感じる。

 1つ目の「高い位置でボールを奪うことで、ショートカウンターを成立させる」は、近年のトレンド的な部分が強い。最近は、自陣のゴール近くからビルドアップを行なうチームが増えている。それにも関わらず、ズルズル下がってブロックを組むのは非常に勿体無い。何故なら、自陣でボールを奪うよりも、高い位置でボールを奪った方が攻める方のゴールに近いからである。

 そのため、わざわざ自陣でブロックを組み、そこでボールを奪ってから長い距離を走りながら攻撃に出て行くよりも、ハイプレスを選択して高い位置でボールを奪ってチャンスを作りたいのだろう。

 ここ数試合は、プレッシングからロメロのところで迎撃出来ている印象。そこからショートカウンターを狙うシーンもチラホラ増えている。課題はその先の連携面。それについては、クルゼフスキもコメントをしていた。

web.ultra-soccer.jp

(日本語ソースでごめんなさい) 

 続いて2つ目の「相手からボールを取り上げて自分たちが保持する時間を増やす」である。これは、純粋に自分たちの攻撃の時間を長くしたいのだろう。サッカーというスポーツは、ボールを持っている方に攻撃の権限が与えられる。そのため、ボール保持を長くすることで、攻撃の時間も長くしたい考えなのだろう。

 では、何故ハイプレス行なうのか。恐らく今季のトッテナムは「先行逃げ切り」に特化したいのだろう。試合開始からハイプレスをかけるのも、高い位置からボールを奪ってチャンスに繋げたいからだし、保持の時間を長くしたいのも、攻撃の時間も増やしてゴールを奪うためである。

 実際、今季のトッテナムはリーグ戦で先制した試合は、6勝1分と負けが無い。また、クリーンシートで終えた試合がその内5試合である。先手を取れば自陣に5-4-1のブロックを築き上げて耐えながら時間を溶かせてる試合は多い。

 それだけで無く、先制点を取れれば相手も得点を奪いに前掛かりに出てくるはず。そうなれば、舞台はトッテナムの得意分野へと変わる。オープン合戦ならトッテナムの方に分があるからだ。そこで、2点目、3点目を決めて一気に差を広げるのが、今のトッテナムの「勝ちパターン」でもある。

 つまり、勝ちパターンに持って行く流れとしてまずは先制点が必要になる。そのためにはボールを奪う、保持することが大事。つまりはハイプレスをかけることだと筆者は思った。

 「そんなんサッカーで勝つための基本的なことやろw」と思う方も多いと思うが、実際コンテが選び取っているであろう策はこれである。当たり前の戦い方で勝ち点を重ねたいのだろう。

セットプレーの改革

 トッテナムは、今シーズンから新たにセットプレーコーチとして、「ジャンニ・ヴィオ」を招聘した。彼の影響もあってからシーズンの序盤からセットプレーでの得点が増えていった。それに加え、ペリシッチという新たなキッカーの存在も大きいだろう。

 そんなセットプレー改革を行なったトッテナムだが、そもそもセットプレーを獲得するのには、”基本的”にボールを持たなければいけない。勿論ディフェンスをしている際にファウルを貰うこともあるが、セットプレーを多く与えられる場面はボールを保持している際だろう。

 これが上記の話しと繋がってくる。今季のトッテナムは先制点を取るために、ボールを奪う、保持することが大事である。そのためのハイプレスだと書いた。

 ボールを握ることで攻めの試行回数は増えるはずだし、敵陣に押し込む形を多く作れれば、上記で書いたセットプレーの理論的にフリーキックやコーナーキックを取ることが出来る。そこで1点を奪えれば、チームとして掲げる「勝ちパターン」に必要なゴールを奪うことが出来る。

 つまりは攻撃の時間を増やすことで巡ってくるセットプレーでも、得点を取るための確率を上げたいのだろう。

 ここまでのハイプレス、ボールの奪い方、セットプレーに関することを簡単に図でまとめてみた。

クソ作図(作成時間5分)

 これは、上記の画像で言う赤色の部分を細分化したものである。めっちゃクソ作図でスマン。ただ、伝えたいことが何となく伝われば良いかなと思う。

3-5-2について

 最後の昨年と違う点は、3-5-2を取り入れた部分であろう。正直ここは、怪我人との兼ね合いが強かった気がする。

 特にクルゼフスキとリシャルリソンがほぼ同時期に怪我したことが大きかった。この頃はヒルもコンテに信用されている感じも無かったので、シャドーを務める選手が居なかった事から3-4-2-1では無く、3-5-2にしたと考えられる。

 なので、意図的だった訳では無くオプションとして使っていたと推測出来る。実際、ブライトン戦や、後半途中から変えたレスター戦を除けばプレッシングの形すらも落として込めて居なかったので、苦肉の策だったのだろう。これについて後術する。

 ちなみに保持はIHのオフ・ザ・ボール動きでビルドアップの出口を無理矢理生み出す形を採用。ベンタンクールが死ぬほどハーフレーンを走ってWBが引きつけた相手選手の裏でボールを受けるという「ボールよりも人が動く」ことで解決していた。まぁ前進の仕方は3-4-2-1よりも3-5-2の方がスムーズなような気がする。中盤がマンツーマンに合わなければの話しだが…。

課題となっている部分

プレスとビルドアップの設計図が無い

 さて、昨年と違う所の次は今現状ぶち当たっている壁についてである。

 ここについては沢山の人が触れているようにプレスとビルドアップの設計図が定まって無い点である。

 ハイプレスでボールを奪いに行くのは上記で書いたような理由だと思う。問題は「何処でボールを奪うのか」である。それがチームとして共有されていないのが気になる点だ。

 例えばマンチェスターユナイテッド戦。この試合は、不慣れな3-5-2という条件付きではあるが、相手のSBをどうやって止めるかがチームに落とし込まれて無かった。

 アンカーのビスマが相手のアンカーまで出て行くことによって、中盤に大きな空洞が生まれる。そこでブルーノが浮くシーンが多々見られた。また、ユナイテッドのSBにも規制がかからないため、そこからブルーノのパスを入れらまくり、簡単に中盤で加速されてひっくり返されてしまっていた。

 その反省を活かすべく、続くニューカッスル戦ではIHがSBまで出て行く形で試合に臨んだ。しかし、ニューカッスルのIHに対し、トッテナムのHVが出て行くことで、その裏を使われて失点してしまった。これは、下記記事でも書いたが、前線のインテンシティが足りなかったのが原因として挙げられる。ハイプレスに出るなら簡単に蹴らせてはいけない。

 それに加え、DFラインが広い範囲をカバー出来る能力を持っていない。そのため、蹴られた先でボールを回収することが出来ないのが現状である。続くリヴァプール戦でもアリソンのロングボールをダイアーが処理を誤り失点している。

 こうなると、相手にもっと苦し紛れな蹴らせ方をさせなければならない。そのためには前線のインテンシティの高さがより不可欠になるだろう。

 3-4-2-1にした際もプレッシングの強度が足りない試合があった。アーセナルとのノースロンドンダービーも簡単に剥がされ、早々に撤退。そこからサウンドバックになってしまい、先制点を献上している。

 前線からの強度がまず足りていないことから始まり、そこでパスコースを切って奪いたい場所へ誘導出来ていないも辛い部分である。それに加え、大きく蹴られたら蹴られたでDFラインがたまにポカしてしまう。これが目立たないミスなら良いが、失点や勝敗に直結しているので、目を背けることは出来ない。

 続くビルドアップも同じである。誰が何処に立ってどのようにボールを動かしたいのかが見えてこない。つまり折角ボールを奪っても押し込めないのである。

 そうなるとただ攻めあぐねる時間帯が続いてしまう。ここ数試合は相手のブロックの外で回すことが多いし、中央でズレを作ることも出来ない。そなるとサイドから攻めるが、中央に相手を寄せられて無い影響で、相手のスライドが間に合いサイドで同数になってしまう。

 ここは設計図の無さも相まって、ビルドアップ能力が決して高く無いDFラインの選手たちにも大きな皺寄せが来てしまっている。

 後ろで貯金が作れない分、落ちてくるケインやクルゼフスキにボールを当ててキープすることで貯金を作っていた。

 しかし、前線の貯金作り隊を潰せば問題無いというのをトゥヘルのチェルシーに開幕から2節目にして証明されてしまっている。

 ここ数試合はラングレがシンプルに蹴り出すシーンも増えたので、ビルドアップは半ば放棄なのかもしれない。ぶっちゃけ長いボール使った方が押し込めそうな感じはするし、押し込めれば上記で書いたクソ作図の右側通りになるので、今後はそうなっていくのかなと思っている。

プレス回避とネガトラ

 続いてDFラインにプレス回避とネガトラが乏しい点である。ぶっちゃけ今季のトッテナムが失点するときの主な原因はこの2つだったりする。

 ビルドアップ隊にビルドアップの能力がそもそも備わっていないので、相手が猛スピードでプレスに来た際に細かいパスワークでプレス回避することが出来ずに、バックパスからサイドに蹴り出してそこで捕まってしまうシーンを何度も見ている。

 特に選択肢を失ったダイアーが慌ててロリスにバックパスした結果こうなることが多い。これだけで簡単に相手ボールになってしまうため、非常に勿体無い。また、保持の時間を長くして攻撃の回数も増やしたいチームにとっては致命的な行為だ。

 また、自陣でボールを奪いそこからカウンターに繋げようとしてボールを失いひっくり返される場面もしばしば見られる。ここのネガティブ・トランジションも気になる点だ。

 カラバオカップのフォレスト戦とホームのリーズ戦はセルフジャッジからカウンターを受けて失点している。ここで集中力が切れてしまい、そのまま運ばれて失点するのはあまりにも勿体無いと感じる。ポジトラはとても良いので、ネガトラの精度を上げれば安い失点は減っていくはずだ。

今後の展望と筆者の考え

 最初に書いたようにチームの完成が期待されるシーズンだったが、前半戦が終わっての感想は「まだ建て壊している最中」というところだろうか。新築が建つのにはまだまだ時間がかかりそうな予感。

 そもそも設計図が出来てないので、新築完成どころの話しでは無い。その設計図とは、さっき言ったようにビルドアップであったりハイプレスの在り方だ。

 ただ、癖のある選手も多いし、個人戦術の面で矯正が必要な選手もいる。リザーブに関しては、スタメン組と能力にかなりの差があるので、なかなかコンテの期待に応えることが出来ずベンチを温める日々が続いてしまっている。そして、選手が伸びないのはその選手自身にも問題があるのかもしれない。

 そうなると今のトッテナムは、中2~3日で次々来る試合の合間で、「ビルドアップ」、「ハイプレス」、「一部のスタメンとリザーブの個人育成」という3輪を回さなければならない。当然この間には移動も発生することを考えれば、あまりにも時間が無さ過ぎる。

 だから補強することで、基礎技術を持った選手たちを獲得できれば、個人育成は省けるため「3輪」から「2輪」ぐらいまで減らせる。だからコンテは、能力を持った選手の獲得を望んでいるのだろう。

 勿論これは筆者が持つ1つの考えに過ぎない。実際練習を見ていないのでただの憶測であるし、真実かどうかは分からない。それでも、こういう背景もあるかもしれないなという感じで受け取って頂ければ有り難い。

 個人的な結論としては、能力を持った選手の補強することで、練習で落とし込む項目を減らしつつ、余った時間で設計図作りを行なって貰えればなと思う。

 

(編集者:川崎人)

 

Twitter↓

twitter.com

 

Blog↓

blog.livedoor.jp

 

note↓

note.com

 

ノースロンドンダービーでアーセナル完勝!トッテナムを閉じ込めた攻撃とは!?

みなさん、どうも。ノーロン見ましたか?アーセナルサポの方々はさぞかし痛快な試合だったでしょうし、スパーズサポの方々からするとストレスフルな一戦だったと思います。

特に前半のアーセナルはパワーを使って攻撃を仕掛け、そしてプレスを行い、宿敵を自陣に閉じ込めることに成功しました。幸運な形での先制点でしたが、そのうちゴールが生まれるだろうな!と思う試合内容でした。

では今回はアーセナルがどのようにしてトッテナムを閉じ込める攻撃を展開していたのか。これをYouTubeで考察しましたので、ぜひご覧ください!

www.youtube.com

 

チャンネル登録、ポチッとお願いします…!!!

ショートでプレッシングについても解説しますので、ぜひお願いします!

では次回もお楽しみに!!!