PL アーセナル vs チェルシー 〜ビッグロンドンダービーの行方〜

 

 

はじめに

ベンゲルからアルテタへ。モウリーニョからランパードへ。お互いに所属した選手、レジェンドが現チームの監督を務めるという、なんとも感慨深く、そしてどこか教習にも浸れるピッチサイドでの両指揮官の立ち姿。そして何と言ってもビッグロンドンダービー。共にクラブのレジェンドに立て直しを任せての一戦。特にアーセナルはアルテタ監督になり2試合目でこのビッグゲームだった。結果から述べるとアーセナルの逆転負け、チェルシーの逆転勝ちという、とても興奮し、そして戦術的にもレベルの高い一戦だった。では今回はこの試合を振り返っていこう。

 

スターティングメンバー

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引用:https://www.whoscored.com

 

これがお互いのスターティングメンバー。アーセナルは前節からジャカに代わりゲンドゥージ、CBのソクラテスに変わりチェンバースが入る布陣。ここで気になるのはジャカの移籍は決定的かもしれないということだろうか。一方のチェルシー。前節、前々節と同じく3バックでこの試合も望む。前節と変わったところはジョルジーニョに変えて出場停止明けのコバチッチが先発復帰したこと。では早速この試合を振り返っていこう。

 

攻守の噛み合わせ

アーセナルは前節と同様にボールを保持し、しっかりと前進することで前半35分あたりまで完全に試合を支配した。一方のチェルシーはガンガン前からプレスをかけるが尽く剥がされ、そして簡単にラインを突破された。ではどのようにアーセナルはボールを回し、そしてチェルシーは剥がされたのか。

OMFエジルを「使った」優位性

前節と同様、アーセナルは整理されたビルドアップにより、この試合も存分にエジルが輝いていた。

まずはそのビルドアップについてをこちらの記事で紹介しているのでご覧になって頂きたい。 

www.soccer-bunseki.com

 ではアーセナルのビルドアップの方法がある程度、理解できたところで話を進めていく。

(黒⇨アーセナル 白⇨チェルシー

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アーセナルはこのようにSBがやや内側をとることで上の図の黒の四角の部分で数的優位を作り出す。チェルシーの守備ブロックは5-3-2のような形をとり、CHに対してSTとCH、逆のSBに対してCHが牽制を行う。そしてSBにパスが出るとSTがプレスを行う。そうするとチェルシーのバックラインとセカンドラインの間に広大なスペースができる。(赤の四角)STのプレスでCHを消せ切れればよかったのだが、アーセナルはSBとCHのワンツーでこのプレスを剥がすことが多かったので、STはSBにプレスを行うことが難しくなっていた。そしてアーセナルはSBで時間ができる。

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そしてこのようにOMFのエジルが降りることでその優位性を生かすことができる。これにはチェルシーの守備も関係している。5-3-2で守るチェルシーの狙いとして、中央でボールを受けるOMFエジルに対し、CBの誰か(主に29番のトモリか15番のズマ)がマンマーク気味の守備を行う。これでOMFの自由を奪おうと試みていた。だが上の図のようにSTのプレスが機能しなくなり、SBでアーセナルに時間を作られる。そうするとアーセナルはOMFがCBを引き連れて作ったスペースにWGが抜け出し、一気にスピードを上げる。このようにエジルを使った優位性でチェルシーを苦しめた。

 

OMFエジルで「作る」優位性

ビルドアップの方法は先述したものと同じで、ここの優位性はOMFエジルがボールを触れることで作る優位性。ではどのように優位性を作り出したのか。

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このパターンはシンプルにOMFの技術の高さで上回り、CBを剥がすパターン。ボールを受けるタイミングと降りる場所、受けてからの技術、そしてスペースの認知。さすがエジルといったところだった。そしてもう一つはこちら。

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このようにCBがマンカークできない場所まで流れることで、四角のエリアで数的優位を作り出す。ここでボールを受けてWBを釣り出し、フリックする事でWGがフリーでボールを持てる。これでアーセナルは優位に立った。

 

ここまではアーセナルのボール保持、チェルシーのボール非保持の解説。では次はチェルシーのボール保持、アーセナルのボール非保持について解説しよう。

チェルシーのボール保持

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 このようにチェルシーアーセナルに尽く嵌められてしまい、3バックの強みを使うことができなかった。チェルシーの狙いとして3バックでボールを回しながら、WBに斜めのサイドチェンジを打つ込むことで一気にスピードを上げようとしたが、アーセナルがCFとOMFでプレスをかけ、そしてWGで中央を消されたことにより、ボールと同サイドのWBにしかパスコースがない状況に陥る。ここでアーセナルSBとWGがプレス、バックラインはしっかりとスライドする事でサイドを圧縮し、ボールを奪う、捨て球を蹴らせる事でチェルシーに主導権を握らせなかった。

 

4-3-3への変更

攻守ともにアーセナルに主導権を握られ、先制点を奪われてしまったチェルシー。せめてもなく、シュートまで持ち込むことすらできなかった。3バックが嵌っていないことは明らかだった。そこでランパード監督は35分に33番と5番を交代。これでチェルシーは面白いように攻守ともに嵌り始める。ではその理由を解説していこう。

攻撃の部分

まずは攻撃の部分から触れていこう。

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DMFのジョルジーニョが入ったことにより、チェルシーは4-3-3に並びが変わる。こうなると何がよかったのか。まずはDMFの存在でOMFが1.5列目まで下がり、DMFの牽制を行う。これでCBの所(四角のエリア)で数的優位に立てるようになる。さっきまでのようにWGが出れば良いのでは?と感じるかもしれないがSBが幅を取っていて、かつアーセナルの守備はサイドを圧縮することでボールを奪うので逆のSBに展開されるとまた最初からやり直しになり、走る距離も長くなってしまう。このような関係でWGがCBまで出れなくなっていた。これでCBが時間を得れるので、ここから様々なボールを供給。ランパード監督になり斜めの長いサイドチェンジを多く使うようになったチェルシーはこの交代から明らかにこのボールが増えていった。そしてどんどんアーセナルを押し込んでいく。

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ボールを支配し押し込んだチェルシー。このようにアーセナルを圧倒していく。アーセナルは自陣に下がり、中央を徹底的に固める。そうすることでボールを外に追いやるのだが、チェルシーの右サイド、アーセナルの左サイドで問題が起こる。上の図のようにCBとDMFに有り余る時間とスペースがあるので簡単にサイドを変えることができ、目線を変え続けたチェルシー。そして右サイドにボールを振った時にこのような状況を多く作り出していた。WGにボールが入るとSBがプレスを行う。その時に同サイドのアーセナルのWG、オーバメヤンはSBに付くのかWGにプレスに行くのか、IHを見るのか、この迷いにより立ち位置が曖昧になっていた。そしてアーセナルSBがプレスに出たのでそのスペースをIHのカンテが使う事でWGオーバメヤンを押し下げることに成功。これでカウンターの脅威もなくし、守備選手ではないWGに守備を強制させることでチェルシーは優位に立ち続けた。

 

守備の部分

これも明らかに改善された。その理由を解説しよう。

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理由は二つで、マークがはっきりした事とOMFに対してDMF(ライン間を埋める役割)が牽制を行なった事。これで一気に守備が改善。中央を締めれるようになり、CBのムスタフィにボールを出させるように仕向ける。これで上の図のようにCBからWG(幅をとるようになったSB)へパスが出ることが多くなったアーセナル。ここにパスが出ると例のようにOMFがサポート行うのだがDMFがしっかりとそこをケア。これでサイドで囲い込むことでボールを奪う。OMFが抜け出すことが多くなったのだが、ここをまだうまく使えなかったWGのネルソン。ここの理解に改ざんの余地がありそうだ。そしてチェルシーはボールを奪い、ポゼッションを高めることで守備の時間をどんどん減らしていった。チェルシーとの違いはCBに質の高いパスが出せる選手がいるかいないかの違いだったのではないだろうか。

 

希望が見えたアーセナルとその課題

それでも粘ったアーセナル。ここまで粘れたのは純粋に『闘う』事が出来ていたから。明らかに今までの試合と違い、球際が激しく、フルスプリントでプレスバックも行う。だからこそデュエルの勝率がアーセナルの方が高かった。アーセナルサポーターはここまで闘うアーセナルを久しぶりに観ることができたのではないだろうか。

闘うこと、整理されつつあるサッカー。ここを継続していくことで内容は良くなっていくだろう。一方の課題としてベンチワークではないだろうか。先発のメンバーと控えのメンバーで差が大きすぎる。だからアルテタ監督はこの試合でなかなか交代カードが切れず、守備の修正ができなかったのではないだろうか。冬の補強で選手を連れてくることが必須だろう。

 

DNAが残るチェルシーのカウンター

チェルシーが逆転ゴールを決めたのは『カウンター』。第一次モウリーニョ政権からカウンターの色が濃いチェルシー。タイトルをとった時のチームを見てみるとやはりカウンター主体で多々かっいることが多い(例外もあり)。この試合もやはりカウンターで勝ちきっている。モウリーニョ監督にその才能を見出され、中心人物として起用され続けたランパード。この師弟の関係があり、そしてチェルシーというクラブカラーをランパード監督がよく理解しているからこそ勝ち切った試合だったのではないだろうか。カウンターでのゴールが決勝点。少なくともこれは偶然ではないだろう。戦術を超えたものを感じることができたゴールだった。

 

まとめ

アーセナルはこの試合、とても悔しいものになっただろう。インテンシティも高く、上手くいく時間帯もあった。だが如何せん、守備に回る時間が多すぎた。もしもベンチに流れを変えることのできる選手がいたならば、、、そう思うサポーターも多いのではないだろうか。アーセナルの次節の試合はマンU戦。アルテタ監督にとって厳しい試合が続くが、どのように闘うのか楽しみだ。そして一方のチェルシー。勝っては負けて、の繰り返しで失速気味だったがこのダービーでの勝利はもう一度、波に乗るのに十分すぎる結果だろう。戦術的な変更で勝利をもぎ取ったこともランパード監督にとって途轍もない自信になるだろう。だが気を緩めてはいけないチェルシートッテナム勝利の後の試合も格下に負けてしまっている。果たして元旦のブライトン戦で勝利を掴むことができるのか。ここも楽しみだ。

何よりもこの試合。流石のビッグロンドンダービー。すこぶる熱く、戦術的駆け引きも見受けることができた。戦術を超えたものを感じることもできた。とても良い試合を観せてもらうと同時に学ぶこともできた。選手は大変だと思うが、この時期にもリーグ戦を中断せずに行うFAとプレミアリーグのクラブに所属する選手に感謝したい。

 

終わりに

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PL ボーンマス vs アーセナル 〜アルテタ監督の初陣〜

 

はじめに

不振も不振。不振を極めてリーグ戦をボトムハーフで迎えたボクシングデイ。新監督のアルテタの初陣はアウェイでのボーンマス戦。グアルディオラが全幅の信頼をおいた彼がどのようにアーセナルを建て直すのか気になったフットボールファンも多いはずだ。アルテタ監督になりたった1試合しかゲームをしていなので、これから詰めていく必要があるが、この試合でやりたいサッカーの尻尾が見えた。今回はアルテタ監督が就任し、見違えるようにスムーズになったビルドアップについて触れていこう。

 

見違えたビルドアップ

この試合のボーンマスアーセナルのスターティングメンバーがこちら。

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引用:https://www.whoscored.com

アーセナルはラカゼットが先発に復帰し、久しぶりにオーバメヤン、ラカゼットのコンビを見ることができた。さらに前回ベンチ外となったエジルも先発に戻ってきている。

ではこの試合で挑戦していた何パターンかあったアーセナルのビルドアップについて紹介していこう。

右サイドの前進

まずは右サイドでの前進方法を紹介しよう。ではどのように前進していたのか。

(黒⇨アーセナル 白⇨ボーンマス

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右サイドは主にSBがCHと同じ高さに上がることで四角の部分で数的優位を作り出す。SBが中に入るのでWGが幅を取り、大外にもパスコースを作り出す。CH(主に11番)はCBとOMFの間に立つことで中央にもパスコースを作り出す。片方のCHは一列前に上がることでライン間で受けれるように、かつCHの注意を引くことでOMFがライン間で受けることができるスペース、CHがターンできるスペースを作る。これで上の図のようにいくつかパスコースが生まれ、OMFがライン間でボールを受けれることが多くなっていた。さらにWGにボールが入るとこのようにサポートを行う。

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このようにOMFがWGのサポート、SBが内側でのサポートを行えるので自然と良い形と関係でサポートを行える。いわゆる「一列前のポジションの選手が同レーンにいない」状態だ。これはさすがグアルディオラ監督のすぐ側にいただけある。自然とこのような形になるようにオーガナイズされていた。

 

左サイドの前進

では次は左サイドの前進の仕方。

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こちらのサイドは主にSBの推進力とCHのサイドチェンジ、SBをWGのコンビネーションで前進する場面が多かった。特にSBのドリブルでの前進が多かった。(自陣深くからだとWGがドリブル突破。ここで引っ掛けられて失点を喫した)逆のSBがポジションを一列上げ、中に入ることで、形として2-3-3-2のような並びを形成。これでCH(特に34番)がCFの脇、SHの前で曖昧なポジションを取れるのでCBからボールを受けた場合にCHが一瞬フリーでボールを受けれ、そこからサイドを帰る斜めのボールを供給することができる。この方法で左サイドは前進していた。

 

CHがバックラインに降りるパターン

これは主に後半から行っていた。アルテタ監督から指示があったのだろう。前半のうちに何度かCHが爆ラインに入ることはあったが、後半になりそれが顕著になった。ではこのパターンだとどのように前進を行うのか。

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このようにCHがバックラインに入ることでCHに時間が生まれる。CHがバックラインに入るために逆のSBがCHの役割を担う。これでCH(主に11番)とSBで中央にパスコースを作り出す。SBが中に入ったのでCB(主に5番)がSBの代わりに幅をとるポジションをとる。これで上の図のように良い関係を作り出せる。これでCHに時間ができたので、ここからハーフスペースに入ったWGに縦パスを入れれるとサイドチェンジできる回数が増える。実際にこのちょっとしたポジションチェンジでアーセナルは同点弾を奪っている。

 

まとめ

ボーンマス戦で見られた再現性のあったビルドアップは大きく分けてこの3つだろうか。アルテタ監督になり、SBとSH(WG)のポジショニングが被ることもなくなり、さらにCHが中央でボールを触る回数も増えた。そうすることにより、ライン間でボールを引き出すことの上手なエジルが何度もチャンスを作り出すことができていた。今まで前進することができなかったアーセナルだが、今までの状態がまるで嘘のようにスムーズに、より合理的に前進することができていた。ボールを持たされるのではなく、しっかりとボールを持つことで守備の時間を少なくしていた。同点に終わってしまったが、アルテタ監督に大いに期待の持てる試合内容だったのではないだろうか。そして今節はビッグロンドンダービー。就任2試合目でのビッグゲームでどのような采配を振るうのか、とても楽しみだ。

 

終わりに

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PL レスター vs リバプール 〜王者の風格〜

 

 

はじめに

クラブワールドカップを制して、帰ってきたヨーロッパ。そこで対戦する相手はプレミアリーグで2位につけるレスター。このタイミングでの天王山となったのだが、リバプールはレスターを寄せ付けることなく、圧勝を飾った。レスターに枠内シュートを打たせず、そして4ゴール快勝。この勝利の仕方に驚いた方も多いのではないだろうか。では今回はリバプールがいかにしてレスターを抑え込み、そして圧勝を飾ったのか。この理由を紹介していこう。

 

リバプール圧勝の理由

リバプールが圧勝できた理由を紹介していく前に、リバプールが立ち上がりに苦しんだ?はたまたボールを持たせた?レスターのビルドアップについてまずは触れていきたい。

苦しんだ?持たせた?レスターのビルドアップ

ではレスターはどのようにしてボールを前進させていたのか。それを解説していこう。

(黒⇨リバプール 白⇨レスター)

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レスターは前節と違い、この試合は格上相手でもしっかりとボールを握り、そして前進することを試みていた。そしてこのようにリバプールのプレッシングの穴を突くようなビルドアップを行う。レスターIH(主に8番)がDMFと並ぶ位置に降りてくることで、外切りを行うWG、背後でDMFを消すCFのプレスのかけ方に若干迷いを与えた。特にCFは背後でDMFとIHのどちらを消せばいいのか難しい状況に陥っていた。さらにレスターはSHが内側に絞る(リバプールIHの近くにポジションをとる)ことで降りたIHとDMFにパスが入った時に、リバプールIHがプレスに出られないように牽制。もしもIHがプレスに出れば、CBからそのままSHに縦パスを受けれるようにポジションをとっていた。この内側に絞る作業を行うので、この試合のSHに10番マディソンが入っていたのだろう。そしてレスターはIHに縦パスを入れSBに広げることで、SHが内から外に抜け出すことで、ゴール前まで迫る場面を作り出そうとしていた。

さらにリバプールがこのようにプレスをかけてきても、特に前半は躱すことができていた。

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このようにリバプールIHがプレスに来ると、SHへ縦パスを入れて一気にスピードをあげる。またWGが中切りを行い、SBにパスが出るとIHがSBにプレスを行う。ここで上の図の黒丸の部分にDMFが入りボールを受ける。そのためにSHがサイドに流れ、リバプールSBを引きつける。このように前進していた。このような方法で、レスターは失点するまでかなり優位に試合を進めることができていたのではないだろうか。

 

圧勝の要因①:ビルドアップの対応

まず一つ目の要因はもちろんレスターのビルドアップの対応。これで苦しめられていたのだから、この現象に対応しなければ流れは引き寄せられなかっただろう。

ではどのように対応をしていったのか。

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このように最前線の3枚の距離が近くなり、中央の選手にパスを出させないように守備。仮にここを通されてもIHはプレスに行かなくなっていた。(DMFまたはIHにボールを持たれても、4-3のブロックを引き、中央に入れさせず、外にボールを追い出す守備をしていた)そしてレスターCBは中央を締められるのでSBにパスを出す。ここでIHが中から外にプレスに出る形になる。さらにWGがDMFを牽制し、DMF、IHがスライドをすることでレスターCFとIHのパスコースを消す。これでレスターSBのパスコースはSHに絞られる。そうすることでパスコースが読みやすく、対応がしやすくなる。これでSHに出るボールをパスカット、または背後に蹴らせることでボールを奪い、レスターのリズムを狂わせた。

 

圧勝の要因②:背後へ、背後へ

最前線の能力を最大限に発揮する、そしてリバプールの武器の一つ。それが背後へのロングボール。

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このようにリバプールは奪ったボールをすぐに背後へ送ることでレスターを自陣に押し下げた。背後へ送る時にCFが中盤に降りてくることで中央のスペースを空け、WGが斜めに入れるようにデザイン。さらにセカンドボールに対し、前向きで反応することができるようになる。これでリバプールはレスターを押し下げて徐々にポゼッション率を上げていった。最前線に足の速いWG、さらにロングパス精度の高いCBがいるからこそできる、シンプルかつ強力な方法だ。

 

圧勝の要因③:レスターの守備と相性の良かった十八番のサイドチェンジ

今やリバプールの十八番とも言える斜めのサイドチェンジ。これがこの試合の勝敗を分ける大きな要因だっただろう。さらにレスターの守備とリバプールのサイドチェンジがリバプール側からすると相性がすこぶる良く、レスター側からすると相性が悪かった。

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このようにレスターの守備はサイドを変えさせず、ボールサイドを圧縮してボールを奪うことを、特に前半は行なっていた。この前に出てプレス、かつボールサイドを圧縮してくるチームに対してリバプールは最善の解決法を持っている。それがサイドチェンジだ。何度も見られるSBからSBへのサイドチェンジ、(この試合ではCBからの斜めのボールが多かった)これでオープンスペースでSBがボールを受けれるので、一気にスピードが上がり、そこから高精度のクロス、フライスルーパス、はたまたドリブルで前進、などのプレーを選択できる。だからこの試合、特に右SBのアレクサンダーアーノルドの攻撃参加を見ることが多かった。これもCBにボールが入った時にWGが背後に走っていること、そこにボールを供給できるCBのフィードのうまさがあるので、レスターは中央を守らなくてはならなくなり、SBがフリーでボールを受けれる回数が多くなっていた。

 

圧勝の要因④:リトリートしたレスター

リトリートさせられたのか、自分たちの意図でリトリートしたのか、はたまたリトリートせざるを得なかったのか、真相は定かではないが、レスターは後半からリトリートして試合に入った。これは前節のマンC戦と似たような状況だ。この状況に陥ると、前節はほとんど何もできずに完敗を喫してしまった。

気になる方はこれが前節のマンC vs レスターの詳細だ。こちらもぜひご覧になってもらいたい。

www.soccer-bunseki.com

 

そして今節も同様に、後半はほとんど何もさせてもらえなかった。リバプールはレスターをさらに押し込み、このように攻め込んだ。

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このようにマンCと同様、中盤に時間とスペースがあったリバプール。マンCと違うのはSBが幅をとること。彼らのクロスの精度を最大限に活かすため、WGがハーフスペースに入りこみ、CBとSBを引き連れる。これでよりSBに時間ができる。さらにレスターの最前線にはCFしかいないため、2CB +IH、DMFの5枚で守備。圧倒的な数的優位なのでボールサイドのIHがSBのサポート、はたまた中えの飛び出し、逆のIHもクロスに対してリスクなく入っていくことができる。マンCが崩し中心なら、リバプールはどちらかというと相手の目線を動かし、高精度のクロスで仕留めるような形だ。SBが深い位置を取れるからこそ、アシストが多く、SBのクロスにSBが飛び込んでいける形を生み出すことができる。これでリバプールはレスターを粉砕した。

 

まとめ

前節同様、レスターは又しても格の違いをみせつけられる試合内容となってしまった。しかも似たような形での敗戦だったのでダメージは大きいだろう。一方のリバプールは王者の風格のある試合運びだった。レスターの準備してきたことを一つずつ潰していき、そして最後には押し込む展開、4ゴールの圧勝。文句のつけようのない内容と結果だろう。これでいよいよ独走態勢に入ったリバプール。果たして昨シーズンの悔しい思いを晴らすと同時に、悲願のプレミアリーグ優勝にたどり着けるのか。そしてどこまで無敗記録を伸ばすことができるのか。ここからも佳境に入っていくヨーロッパサッカー。どのような結末を迎えるのか楽しみだ。

 

終わりに

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PLマンC vs レスター 〜マンCの圧倒的な対応力〜

 

 

はじめに

昨シーズン、ブレンダン・ロジャーズ監督が就任し、ガラッと試合内容が変わり、迎えた今シーズン。レスターは躍進も躍進。ここまでリーグ最少失点でビッグクラブひしめくプレミアの地で2位につけている。そして迎えたマンCとの上位直接対決。ここでマンCを叩ければ、下の追走を阻み、そして首位のリバプールにプレッシャーをかけることができる。だが結果は敗戦。王者マンCの牙城は高かった。マンCはレスターの狙いにことごとく対応し、そしてリーグ最少失点のレスターを3ゴールと粉砕。内容でも圧倒し、その強さはやはり本物だった。では今回はレスターに対し、マンCはどのように対応していったのか。これを解説していこう。

 

レスターの守備とマンCの攻撃

これがこの試合の大きなトピック。まずはこちらを紹介していこう。

レスターの守備(前半)

レスターはアウェイということもあり、守備から試合に入る。この守備戦術は前半と後半で若干異なっていた。ではまずは前半のレスターの守備戦術とマンCの攻撃について紹介していこう。

(白⇨レスター 黒⇨マンC)

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結論から述べるとレスターの守備は『マンマーク』。そして対マンCのスタンダードな守備戦術となったDMFを消す作業もしっかりと行なっていた。上の図のように、各々がマンカークを行う。その時にSHは若干SBと距離をとりつつ、前向きに、かつ内側からプレスをかけるようにポジションをとる。こうすることで基本的にWGのマークを見ながらSBにプレスをかけることができる。これがプレスのスイッチの入れ所となっていた。(上の図の黒のラインをSBが越えないと基本的にプレスはかけない)

バックラインは基本的にペナ幅で距離感を保つのでここでも内から外にプレスをかけることができる仕組みに。SBに対してSHがプレスに出ると、WGに対してSBがマークを行うようにオーガナイズされていた。このような方法で前進させずに、そして中央にボールを入れさせない狙いがあった。そしてボールを引っ掛けてロングカウンターを狙うことを目的としていた。これが基本的な前半のレスターの守備のメカニズム。これに対してマンCはどのように攻撃を仕掛けていたのか。

 

マンCの攻撃(前半)

マンマークで守備を行われたマンC。だがそれに対してしっかりと対応することができるのがペップ・グアルディオラのマンC。ではどのように攻撃を仕掛けていたのか。

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このようにマンマークを逆手にとり、マンCはレスターを混乱に陥れる。ではその詳細を解説していこう。まず、バックライン。レスターの守備で紹介したようにCBに対してはCFが牽制を行うレスター。だからマンCはここである程度ボールを持つことが可能に。さらにDMFをマンマークされているので(多分試合前からグアルディオラは想定していた)IH(B・シウバ)がDMFと同じラインに降りる。そこで幅をとっていたWG(特にスターリング)がハーフスペースではなく、中央に入り込むことでレスターSHを迷わすことができる。入ったWGにスペースを与えるために、IH(デ・ブライネ)が中央からハーフスペースに流れる。この動きでIHを捕まえていたDMFに対して局面で2 vs 1を作り出し、DMFを迷わす。CBはレスターSHの動きを観てSBにパスを出すかWGに縦パスを入れるかを判断。またIH(B・シウバ)にパスを一度つけることでレスターIHを誘き出し、その背後によりスペースを作り出した。これでレスターの守備を混乱に陥れ、簡単にラインを突破するようになり、逆転勝利をもぎ取った。

レスターの守備(後半)

前半の守備戦術では守れなくなっていたレスター。そこでロジャーズ監督は若干やり方を変えることで守備を安定させようとした。その方法がこちら。

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このように後半から明確に4-1-4-1に変更。この意図としてDMFに中に入るWGとハーフスペースに流れるIHを観ることを意図としていた。さらに4-1-4-1のセカンドライン。ここはマンマークではなく、ゾーンディフェンスに変更。こうすることで入ってくるWGと流れたIHに縦パスを入れさせないように対応。これでマンCのSBびパスを出させて上の図のようにスライドすることでボールをう爆ことを目的としていた。

マンCの攻撃(後半)

ではレスターのこの守備の変更に対してマンCはどのように対応したのか。それを紹介していこう。

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このようにCBが縦パスを入れれないのでSBにパスを出す。先述したようにこれでレスターのプレスのスイッチが入る。ここでWGが幅をとることでレスターSBに連動してWGにマークをつけさせるように動かす。そうすると一瞬空いてくるのが黒丸のスペース。いわゆるポケットと言われるスペースだ。ここにSBから抜け出すIHにパスを出すことで一気にスピードアップ。この方法で何度も前進を行う。そうすることでレスターを自陣に押し込むことに成功。こうなると4-1-4-1のブロックで守るレスターを圧倒することができる。ではなぜ圧倒できたのか。

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このようにレスターは押し込まれるとペナ幅でブロックを結成し、そして大外の選手には内から外にプレスをかけることで中に入り込ませないオーソドックスな守備。ここでマンCがまず優位性を作る。そしてこの幅をとった選手で優位性を作り出せる大きな要因が上の図の黒丸の部分。ここで時間とスペースがあるので簡単にサイドを変えることができ、それを繰り返すことでギャップを作りだし、縦パスを供給することができていた。また跳ね返されてもセカンドボールに対して人数をかけれるので、すぐにボールを回収できる。これでマンCは後半によりレスターを圧倒した。

 

レスターの攻撃

レスターの攻撃(試合を通して)

攻撃に関しては前後半で特に変わりなく、試合を通してこれらの攻撃を行なっていた。ではレスターの攻撃のメカニズムを紹介していこう。

カウンター

基本的にこの試合はカウンターでゴールを目指すことを狙いとしていた。レスターの最大の武器、CFヴァーディーのスピードと裏抜けのうまさ、そして決定力を最大限に生かす戦術だ。実際にこの方法でレスターは先制点を奪っている。(ネガトラでボールをすぐに奪い返す形だったが)ではどのような方法でカウンターを成立させていたのか。

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これがレスターのカウンター完結の方法。上の図の奪い所①の所でボールを奪うとSB(奪った選手)が基本的にそのまま黒丸のスペースにボールを流し込む。奪い所②でボールを奪うとSHに一度パスを入れることでマンCのSBを誘き出し、その背後により広大なスペースを作り出すことができる。(これは先制点が生まれたシーン)その時にCFのヴァーディーが必ずCBの間に立ち、そして中央から外(基本的にハーフスペース)に抜け出すことで優位に立つことができた。逆サイドのSHがスプリントでクロスのターゲットになることも忘れてはならない。この方法で決定機を何度か作り、マンCのゴールを脅かした。どれか一つでも決まっていたらまた試合の内容は大きく変わっていたのではないだろうか。

ボール保持

ロジャーズ監督がレスターに就任し、一番変わったのがボール保持の局面。ミラクルレスターを言われ、リーグ優勝を果たした時のロングカウンター一遍のチームではなくなっている。この試合ではボール保持の局面は少なかったが、ボールを動かすという確かな方法を持ってプレーしている場面もあった。そしてその方法から何度かチャンスを作った。ではそれを紹介していこう。

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上の図のようにCBが広がり、CB +GKで数的優位を作り出す。そしてここでボールを受けることでマンCのプレスを呼び起こす。プレスが来ると基本的にSBにパス。ここでマンCのWGが連動してプレスをかけてくる。さらにIHは立ち位置でレスターのIHへのパスを消すことで、SBのパスコースを絞る。ここでSBはSHにパスを出すとマンCのSBがもちろんボールを奪いにくる。だがここが大きく変わった所。優勝した時のレスターなら、簡単にラインの裏へボールを蹴るだろうが、ここでしっかりとIH(DMF)が中央でフリーになっている。ここでフリーになれるようにロジャーズ監督が「ポジショニング」を落とし込み、それを実行できる頭の良い選手が揃っている。外⇨中とボールが動くと、目線が変わり、ズレが生まれる。そしてあくまでも狙うのは黒丸のスペース。ここに抜け出し、スプリントしたSHにクロスを送ることで早い攻撃を仕掛け、ゴールに迫っていた。

 

 マンCの生命線?

この試合でより感じたのがマンCの生命線はWG(幅をとった選手)の1 vs 1の勝率にあるのではないかということ。この試合を見返してみるとわかるのだが、特にWGのマフレズが幅を取り、そしてそこからSBとの 1vs 1を仕掛けることが多かった。この試合、ここでの勝率が圧倒的に高かったので右サイドから攻撃を仕掛けることが多かった。

ここで優位性を作り出すためにこの試合はサイドチェンジを多く使用。この攻撃を中心に3ゴールを奪い、逆転勝利を収めている。さらにもっというとWGで優位を作ると大量得点で勝利を収めていることが多い。まだこれを意識してみて数試合なので、もう少して確認してみようと思う。

 

まとめ

この試合の思惑とその対応がはっきりと見えた良い試合だった。マンCは強さを見せつけ、そしてその方法もレベルの高いものだった。『観る』ことができるのはグアルディオラ監督の指導力が高いことが安易にわかる試合だった。観ることができるから相手がどのように動き、そしてどこに穴があるのかわかるので、対応ができるのだろう。さすがといったところだった。一方のレスター。ビッグ6キラーのヴァーディーのゴールもあったが、内容は完敗だった。ロジャーズ監督も言っていたようにまだその差を確認できた試合だったのではないだろうか。この敗戦をどう受け止め、そして次節のリバプール戦をどのように戦うのか。とても楽しみだ。

 

終わりに

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PL エバートン vs アーセナル 〜進歩がなかったアーセナル〜

 

はじめに

お互いに暫定監督最終試合。もちろんエバートンの監督となったアンチェロッティアーセナルの監督となったアルテタはスタンドから観戦。何度も何度も顔を抜かれていた。そして試合の内容の方はどうだったかというと、正直トピックスの少ない試合内容だった。そんなこの試合の自分なりに感じた事といえばリュングベリ暫定監督の不可解な采配。今回はここに焦点を当てて紹介していこう。

 

前節から成長のないアーセナル

前節のマンC戦と同様、アーセナルの守備の連動性は全くなく、そしてエバートンのバックラインに自由にボールを持たせる事となっていた。この「バックラインでボールを自由に持たせる」という状況に自分は疑問を感じた。リュングベリはこの1週間でどのようなトレーニングを積んできたのかと。ではどのように守備を行なっていたのか。

(黒⇨エバートン 白⇨アーセナル

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このように4-4-1-1のような形で構えるのだが、このCFの脇のスペースを使われることに問題があった。エバートンのバックラインにプレスまたは牽制を行わないのでCBがかなり余裕を持ってボールを持てる。ここでボールを自由に運ばれるのでSHが釣り出され、SBを使われて、SBの背後をSHに疲れるという悪循環に嵌っていた。これはまさに前節のマンC戦で開始早々に奪われた先制点と同じ問題点だっただろう。

これが前節のアーセナル vs マンCの詳細。気になる方はご覧になってほしい。

前節の詳細

www.soccer-bunseki.com

 

「手前」のパスとエバートンの守備

これもこの試合でアーセナルが特に前半、劣勢に回った理由だろう。劣勢に回ってしまった原因が、送るパスがほぼ「手前」のパスになっていたから。「手前」のパスというのは、いわゆる「足元へのパス」だ。この足元へのパスが多くなっていたので、動きがつかず、そして相手を混乱に陥れることができなかった。そしてこの手前のパスが多くなるのでエバートンの守備に嵌っていった。

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まずはエバートンの守備。これはチェルシー戦、マンU戦とほぼ同様だったが、この試合に関しては明らかに前2戦と比べプレスラインが高くなっていた。これはアーセナルCBの21番チェンバースにボールを持たせて捨て球を蹴らせるか、SBにパスを送らせることを狙っていた。SBにボールが出ると一気にサイドを圧縮。ここでSHに普段ならばDMFで起用されるデイビスを起用した意図に気づくことができる。上の図のように一気に圧縮する際に、エバートンCHはアーセナルCHをマーク、浮いてしまうアーセナルOMFを牽制することができる。主にここの守備を行い、中央を占めることが意図としてあったのではないだろうか。このようにアーセナルはどんどんと嵌っていく。仮にSBでSHをはがせたとしても「手前」のパスなので、すぐにプレスバックで嵌められてしまう。

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このように背後を取る動きがないので自然と足元のパスになる。SHはボールを一度受けてからドリブルを仕掛けようとし、CHは「その場」で受けようとする。CFにボールが出るのだがここでCFがボールを受けても孤立して結局奪われてしまう。これが手前で受けることが多く、そしてそれによりエバートンが守備をしやすかった理由。これで前半はエバートンが押し込むことが多く、そしてアーセナルは跳ね返すだけの守備対応が続くことになった要因だ。

 

後半に持ち直したアーセナル

ビルドアップの修正

前半のアーセナルの内容は見ていられないものだった。だが後半になり、持ち直したアーセナル。ではどこをどのように修正したのか。

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大きな修正といえばビルドアップの場面。このようにCHがバックラインに入り(主にジャカ)、片方のCH(トレイラ)がサイドに流れることで、中央のスペースを一瞬開ける。ここでOMFが縦パスを引き出すかCBが運ぶことでエバートンの守備を動かし、ギャップを作る。ここでOMFが前を向けることでSHが背後を取る動きをつける。これで動きが生まれる。そしてもう一つ。それがSBにボールが入った時。ここでも修正が入っていた。それはCH(時にOMF)のハーフスペースを使っての上がり。ここで「縦」の動きをつけたことで、ライン間でボールを受けることができるようになっていた。これで少し持ち直したアーセナル。だがリュングベリの迷采配で流れを絶ってしまう。

 

リュングベリの迷采配

果たしてリュングベリは何を感じ、そして何をピッチの選手に伝えたかったのか。まず32番スミスロウの交代。後半の修正により、動きが良くなっていたOMFを65分に交替させる意図が読めなかった。この交替の意図に理由をつけるとしたら28番のウィロックの方が抜け出しがうまく、ボールを受けた時の推進力があることだろうか。だが動きが良くなったスミスロウを交替させるには早すぎたのではないだろうか。そしてもう一つの交替。それが14番オーバメヤンを下げての9番ラカゼットの投入。この交替は率直に「勝ちにいっていない」と感じさせるものだった。オーバメヤンとラカゼットのコンビは昨シーズン、何度も見られ、そして良い連携が築けているはずだ。組織で崩しきれないこの試合のアーセナルが最後に頼るべきことはこの2人の個人技だったのではないだろうか。ここにも疑問が残った。

 

まとめ

この試合で見せたアーセナルの状態。サポーターも途中で帰るという散々なものになってしまった。このゴタゴタの中、監督を引き受けるアルテタがどのようなサッカーを植え付けるのか。彼もまたリュングベリと同様、トップチームの経験がない。果たしてチームの雰囲気は変わるのだろうか、そして試合の内容も変わるのだろうか。次節のアーセナルの試合に注目だ。そして一方のエバートン。監督交代のブーストが効果を発揮し、チームに勢いがついた時のアンチェロッティ就任。彼も実績はいうまでもなく、そしてエバートンの選手も申し分ないクオリティーを持っている。果たしてどのような化学反応を起こすのか。エバートンの試合も見逃せない。年末年始もしっかりと試合を行うプレミアリーグ。選手からしたら休みがほしいところではあるかもしれないが、フットボールファンからするとこれほど有り難い事はない。今年も残りわずか。皆さんも今年はプレミアリーグを見ながら年を越すのはどうだろうか?

(今回、批判的な内容になってしまった事お詫び申し上げます)

 

終わりに

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ラ・リーガ バルセロナ vs レアル・マドリード 〜個人戦術とチーム戦術の応酬〜

 

 

はじめに

世界最高峰の試合。それがクラシコ。いつものように激しい試合になると思ったが、この試合はとても落ち着いたものになっていた。それも相まってか、結果は0-0のスコアレスドローに。それでもクラシコクラシコ。0-0でもとても見応えのある試合だった。そして要所、要所で見えた「戦術」の数々。世界最高峰のクラブに所属する選手たちだからこそ見ることができるものだったのではないだろうか。では今回はその「要所」で見えた「戦術」を紹介していこう。

 

空間とスペースを見つけるバルセロナ

この試合の大きなトピックスの一つ。それがこのバルセロナGK、CBからの縦パス。この試合を観戦した方なら驚いたプレーの一つではないだろうか。この縦パスがバルセロナの攻撃の生命線の一つとなっていた。ではどのようなメカニズムで縦パスを入れていたのか。

(黒⇨バルサ 白⇨レアル)

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これがバルセロナの縦パスを入れるメカニズム。GK(時にCB)がボールを持つと、ホルダーの身体の向きでどちらにパスを出すかある程度決める。そうするとマドリーが守備のアクションを取る(後に解説)。この時にDMFとIH(主にデヨング)がボールを受けに降りることで、マドリーのOMFとIHを近くに引き連れる。この状況だとバルセロナSBが浮くので、マドリーSBはここを牽制に出る。さらにWGがサイドに流れることでCBを引き連れる。またCFがDMFの視界に入るように降りることでDMFを引き連れる。

同じように逆のWGも中に入り、立ち位置で優位に立つ事でCBとSBを引き連れる。これで空くスペースが上の図でいう黒丸のエリア。ここにGKから縦パスを出し、一気に速い攻撃を仕掛ける。そしてもう一つのパターン。それがCFが受けるパターンだ。それがこちら。

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 これがもう一つの方法。このパターンはDMFがIHをマークしている時に起こり得る現象。この場合は右WGのグリーズマンが中央まで入り込むことでCBを引きつけ、降りるCFをフリーにするという方法。これで前進し、SBが抜け出すことで攻撃の糸口を見出した。『観て』パスを出せる事、『空間』を作るための連動性、『スペース』を使える認知能力、相手の守備戦術に対応できる柔軟性。これらのレベルが高いので観られるプレーだろう。

 

左サイドで優位に立つバルセロナ

サッカーの内容が多少変化しても、あくまでも優位性の作り方は『ポジショニング』だ。それが顕著に現れたのが左サイド。ではどのように優位に立っていたのか。

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このようにレアルの「守備の穴」をうまくついたバルセロナ。特に前半にこのような場面が見られた。この優位の立ち方はシンプルでとても簡単なものだった。それはWGがハーフスペース(グリーズマンが中に入りたがる)にポジションをとる。それに伴い、SBが幅を取ることでレアルの守備の穴をつく。レアルSBは基本的にバルセロナSBを見ることが多かったが、このような状況に陥るとWGの方が危険なポジションにいるのでそこをSBがマークする形になる。そうするとこのようなフェーズに移る。

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このようにレアルSBがWGをマークすることで空いてくるのが黒丸のスペース。ここをSBが使うことでチャンスを広げる。ここをうまく使える理由が4-4-2のブロックに入ったレアルCFベイルの立ち位置。彼がSBをマークするのか、WGをマークするのか、それともIHにプレスをかけるのか、ここがはっきりとせず、迷っていたのでポジショニングがあやふやになり、バルセロナはチャンスを作り出すことができていた。相手のポジショニングを観て三角形の大きさを作り変えるのも実にバルセロナらしいものだった。

 

組織だったレアルの守備

この試合のもう一つの大きなトピックス。それがレアルの守備戦術。ジダン監督がここまで連動性のある、そして組織立った守備戦術を使ったことはなかったのではないだろうか。ではどのような守備を採用していたのか。

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このようにレアルの守備は基本ハイプレスで人を捕まえる守備戦術を採用。これの狙いとして後ろから丁寧にボールを繋がせずにロングボールを蹴らせる意図と繋ぐならば、引っ掛けてショートカウンターという狙いが明確にあった。そのためにCBに対してCFとIH(バルデルデ)がマーク、DMFに対してはOMF、IHに対してはCHとDMF(時にCF)SBに対してはSBが牽制するというものだった。これでレアルはバルセロナのお株を一つ奪う事に成功した。だが先述した通り、バルセロナのGK(CB)からのフィードで突破されていた。ジダン監督はここのケアは特にせずに個人の守備能力で対応させていた。それで対応できてしまうのがレアルの強さで、ここでも世界最高峰の個人戦術を見受けることができた。

 

優位に立たれた左サイドの対応

ここでも見せたジダン監督の修正能力。彼のこの能力は高いと言って良いのではないだろうか。ではどのような対応を見せたのか。

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このようにDMFがDFラインに入ることでCBがハーフスペースにポジションを取っているWGにCBがマークに行ける。そうするとどうなるか。バルセロナSBに対してレアルSBが迷いなく対応にいくことができる。そして一番の不安点だったCFのあやふやなポジショニングをIHにプレスに行ける位置に修正。これでしっかりとブロックを作り出すことで、ペナルティエリア内からのシュートを打たせる場面をほとんど作らせなかった。

 

メンディとバルデルデの存在

これは攻撃にあたり、この2人が特に効いていた。ではどのように効いていたのか。

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これがCHとSBが効いていた理由。レアルの攻撃はCFのベイルが幅を取り、CFのベンゼマとOMFのイスコが中央付近でプレーすることで、CHのバルデルデがハーフスペースに入れるスペースが生まれる。これが主にショートカウンターを仕掛ける時のメカニズム。そしてもう一つ。これがサイドを変えるパターン。これはビルドアップから見受けれることができた。意図的に左サイドに全体を置き、サイドを変えることで一気にサイドを制圧する。SBメンディの身体能力、特に走力の部分で秀でたものがあるからこそできる攻撃ではないだろうか。

 

まとめ

まさに0-0でも面白いと言われる試合だった。その理由として選手個々人の戦術理解度の深さと技術の高さが相まっているからではないだろうか。このような割と落ち着いたクラシコもまた血張った見方ができて興味深いものだった。結局ラ・リーガのトップにいる両チーム。伏兵が多く潜むラ・リーガで今シーズンはどのような結果を残すのだろうか。世界最高峰の両チームの試合を今後も注目していきたい。

 

終わりに

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  • オススメの戦術本 

戦術、分析について勉強する際に色々な本を読み漁りました。その中でおすすめの本を紹介します。きになる方はぜひご覧になってみてください。

アナラシス・アイ

 

 

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セットプレー最先端理論
 

 

 

主にこの3冊で勉強しました。まだまだ読み漁っていき、面白い本があればまた紹介しようと思います。ぜひみなさんもこれらの本を読んで、そして試合を観て、このブログで自分の試合の解釈を確認していただけると幸いです。

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PL アーセナル vs マンC 〜崩壊するアーセナルと挑戦するマンC〜

 

はじめに

これは本当に『ビッグ6』同士の一戦だったのだろうか。そう感じさせるほど、今のアーセナルとマンCの力量には大きな差があった。チームの完成度、インテンシティの高さ、トランジションの速さ、何よりもモチベーション。どれを取ってもアーセナルはマンCに大きく遅れをとり、そして何も収穫のない敗戦となってしまった。一方のマンC。最終ラインの負傷者続出と一歩寄せきれない状況が続き、勝ち点を落とすことが多い今シーズン。それに手を打つべく、グアルディオラはまた新しい事に挑戦していた。今回はマンCの新しい挑戦を紹介しつつ、アーセナルの崩壊についても触れていこう。

 

マンCの挑戦とアーセナルの崩壊

早々の失点でわかるアーセナルの『緩さ』

まさにあっさり。そんか表現がぴったりのアーセナルの失点。これがアーセナルが崩壊している要因の一つ。ではどのように『緩く』、何が原因で失点したのか。

(黒⇨アーセナル 白⇨マンC)

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まず原因だったのはCBに運ばれる場面。上の図の四角のエリアにCBが入った時にSH、CH、OMFの誰がプレスに行くのかがはっきりしていなかった。さらにWGがハーフスペースに入り、SBが幅をとる事でアーセナルのSBの守備の立ち位置が難しくなる。ここで中を閉めれば良いのだが、若干外をケア。そうするとCBとSBの距離感が広がり、ギャップができる。このギャップを突かれ、CFに裏を取られる。さらにCFに抜け出された後のCBの対応も軽く、簡単にクロスを上げられてあっさりと失点。全てが『緩く』そして『ちぐはぐ』している守備だった。今のアーセナルの現状を端的に表している失点だったのではないだろうか。

 

マンCの挑戦とアーセナルの守備

個人的にこの試合の一番のトピックスはマンCの新しい挑戦。グアルディオラはいったい幾つのアイデアを持っているのだろうか、そう感じるものだった。では早速それを紹介していこう。

4-2-3-1からの変形

この試合、いつもの4-3-3ではなく、4-2-3-1の布陣で挑んだマンC。OMFにデ・ブライネ、さらに左WG(36分から右WGでプレー)に内側でのプレーを得意とするフォーデンを起用。これに大きな狙いがあった。それがこちら。

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シティのこの試合の前半は右SBがバックラインに加わることが多く、3バックの形でボールを保持。アーセナルの守備のブロックが4-4-2でCFとOMFがCHをなんとなく消す形をとっていた。だからバックラインで数的優位を作るためにこのような形をとった。そしてアーセナルのCFがプレスをかけるとスライドしてOMFがボールサイドのCHをマーク。ここでシティのCHとCBが完全にフリーになれる。(上の図の赤丸)アーセナルは背後の連動性がなく、この2枚をフリーにさせてしまっていた。そしてここからシティの前線の動きに注目してもらいたい。これがWGにIHの選手を起用した意図が隠されていた。左WGが内側に入り、ハーフスペースをとる。そうするとSBが大外をとり、幅を作る。さらにOMFが右のハーフスペースに入り、WGがハーフスペースから大外をとることで幅を生み出す。これで攻撃時の並びが3-2-5の形になる。これはいつもの4-3-3の時と同じ攻撃の布陣だ。いつもと違う攻撃時のポジショニングの作り方をすることで、相手を混乱に陥れることに成功していた。

 

新しい変形の仕方の意図

ではこの新しい変形の仕方の意図は果たしてどのようなものだったのか。

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結論から述べるとこの狙いは「クロス攻撃」。そのためにこの試合は質の高いクロスを上げれるメンディをSBで起用。さらにWGにフォーデンを起用することで、SBが幅を取れるようにする仕組みを作り出していた。さらに先述したバックラインでの数的優位により、CBがかなり余裕を持ってボールを持てるのでここでSHと駆け引きができる。もしもSHが出てくるのならばSBをシンプルに使い、SHが出てこないのならばこの試合の先制点のように運ぶことでパスコースを作り出し、効果的なパスを配給。点で合わせることのできるCFのジェズス、シュートの質、オフザボールの質の上がったWGのスターリングに良い形でクロスを届けるためにこのような「クロス攻撃」を仕掛けるための仕組みを新しく挑戦していた。

 

では次項からはこの試合の主なトピックスについて解説していこう。

縦に早かった前半のマンC

上記で解説した攻撃を試したい意図があったであろうグアルディオラ監督だったが、それとは裏腹に、前半のマンCはかなり縦に早く攻撃を仕掛けることが多かった。その理由はアーセナルの守備に関係していた。ではどのようにアーセナルが守備を仕掛けはじめ、そしてマンCは早い攻撃を仕掛けるようになったのか。

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このようにアーセナルのCHがフリーになっているマンCのCHを捕まえにいく。このプレスは特に整理されているものではなく、CHゲンドゥージの個人の判断だったのだろう。ここにゲンドゥージが出てくるのでパートナーCHのトレイラの脇に広大なスペースが生まれる。さらにバックラインも押し上げをしないため、ライン間にもスペースが生まれる。ここを効率よく、そして縦パスを一本で通すため、時間をかけずに縦に早く攻撃を仕掛ける場面が多くなっていた。アーセナルの守備のことをもっと言うとSHが絞らないのでここの縦パスを通されることになっていた。ここを締めるとSBにパスが出るので対応できなくなっていたのだが...

WGの入れ替え

ライン間で簡単に受けれることが多かったマンC。それに伴い、両WGが36分あたりで左右入れ替わっていた。この意図としてはライン間でボールを受けれるようになったことにより、カットインからのシュートを狙ったのだろう。試合の流れを読み、すぐに采配を振れるグアルディオラ監督。さすがの一言だ。

後半のアーセナルの守備の修正

後半になるとアーセナルは少し守備のやり方を変えることで簡単にライン間に縦パスを差し込ませなくしていた。ではどのように修正したのか。

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このようにOMFがセカンドラインに入ることで4-1-4-1もしくは4-5-1の形で守るようになる。これでCHを前向きに、マンマーク気味に見れ、さらにライン間への縦パスを着ることができた。これで後半立ち上がりは若干アーセナルがペースを取り戻すことができていた。

アーセナルの修正に対するシティの修正

このような対応をされたシティ。これに対してどのような対応をしたのか。

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アーセナルの最前線のプレスが1枚になったことにより、CB2枚で数的優位に立つことができるように。そうするとSBが一列前に上がる。そうするとOMFとCHの一枚がマンマーク気味で守備をしていたシティの三列目に対して遅れをとってしまう。そこでSBに対してはSHが見ることで対応をしたアーセナル。そうすると空いて来るのがWGへのパスコースと場合によってはOMFのパスコース。CB(時にボールを受けたCH)がSBに一度ボールを当てることでSHを誘き出し、そしてセカンドラインを簡単に突破していた。この修正でマンCは流れを引き戻し、ホームチームを圧倒した。

 

まとめ

このようにしてアーセナルを圧倒しつつ、新しい動き、作りを試したマンC。このように多くの整理されたパターンを持っているからこそ勝てる試合が多いのではないだろうか。それでも今シーズン勝ち点を落とすことが多いのは、個々の寄せの甘さだったり、追い込んでも逃してしまうところにあるだろう。リーグ3連覇の雲行きは怪しいが、まだ全てのコンペティションに残っているマンC。その中でも喉から手が出るほど欲しているCL。果たして今シーズンはCLを制覇することができるのだろうか。しっかりと見届けい。そして一方のアーセナル。スタイルが決まらず、それに伴ってインテンシティ、モチベーションがともに低く、プレスバック、攻守の切り替えも遅く、全てが緩いアーセナル。辛うじてこの試合の唯一の収穫といったらマルティネッリがしっかりと通用したことぐらいではないだろうか。このままではオーバメヤン、ラカゼットと計算のできる選手が今冬にも移籍するかもしれない。果たしてこのまま崩壊の一途を辿るのか。それとも噂が出ているアルテタを監督に据え、立て直すことができるのか。(そうとはいってもアルテタもトップの監督の経験がないので未知数だが。)はたまた他の監督を連れてくるのか。もう一つの赤いビッグクラブはふっ長の兆しが見えている。このまま置いていかれるのだろうか。これからの動向に注目したい。

 

終わりに

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